弁護士ブログ

2025/01/17

離婚はどうやったらできるの?離婚の方法や裁判で認められるための要件を解説!

第1 はじめに
 弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスの弁護士坪井智之です。
 当事務所では離婚に関するご相談を数多くいただいています。離婚についての問題は、どのようなときに離婚が認められるかということから、親権や財産分与に関することなど多岐にわたります。そのため、一般の方には何が問題になるのかを把握するのが難しいところもあるかと思います。そこで今回は、離婚のときに何が問題になるのか、網羅的になるべく分かりやすく解説してみたいと思います。

第2 離婚はどのようなときに認められるのか?
一口に離婚といっても、その方法は複数あります。その中で多いのは、①協議離婚、②離婚調停による離婚、③裁判上の離婚、の3つです。

1 協議離婚
まず、日本において、離婚は当事者の協議によってすることができます(民法763条)。これを協議離婚と言い、夫婦の間で合意さえできれば、理由を問わず離婚することができます。そして、離婚の効力は離婚届を提出することにより発生します(民法764条、739条1項)。
なお、配偶者の一方が他方の同意を得ることなく無断で離婚届を作成し提出したらどうなるのでしょうか?この場合、夫婦の間で離婚の合意はできていないので、法的には離婚は成立しないことになります。しかし離婚届を受理する役所としては、あくまでも離婚届が必要な形式を備えているか否かを判断するにとどまり、実際に双方が合意しているか否か等を確認するようなことはしません。そのため、形式さえ整っていれば、離婚届は受理されることになります。そして届出が受理されている以上、戸籍には協議離婚した旨が記載されてしまいます。この場合に、その戸籍の記載の訂正や消除をするには、裁判または審判の手続が必要です。しかし、そうすると離婚を望まない配偶者の側にとって不都合ですので、このような不都合を防止するために、離婚届出不受理申出制度(戸籍法27条の2第3項)が用意されています。この届出をすることにより、本人の意思に基づくことが確認できない離婚届は受理されなくなります。したがって、離婚協議中であるものの離婚をしたくない当事者は、万が一に備えて、この届出をすることを検討してみてもいいかもしれません。

2 離婚調停による離婚
(1)離婚調停
協議離婚をできない場合、では裁判かというとそうではありません。原則として、離婚訴訟を提起する前に、まず家庭裁判所に離婚調停を申し立てる必要があります。離婚調停とは裁判官を含む調停委員会の支援の下、当事者間で解決方法の合意を目指す制度です。裁判とは異なり手続が簡易で費用も安価な上に、裁判官が手続きに関与するため、合意内容の法律的な妥当性を確保することもできます。
 このような訴訟の前に調停を経るという制度は、「法は家庭に入らず」というローマ法以来の考え方に基づいています。つまり、離婚という家庭の問題に国家がいきなり介入するのではなく、なるべく当事者の互譲により円満かつ自主的に解決してもらおうというという考え方になっているわけです。
 離婚調停により双方が離婚(親権も含む)に合意できた場合、その調書が作成された時点で離婚が成立します。そして、一方の当事者が離婚届を作成し提出することとなります。そのため、改めて2人で離婚届を作成する必要はありません。一方で、離婚や親権に合意できなかった場合、離婚調停は不成立となり、離婚は成立しないことになります。
(2)調停に代わる審判
 調停が成立しない場合でも、家庭裁判所は、相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で審判をすることができます(家事事件手続法248条1項)。これを調停に代わる審判と言い、その効力により離婚が成立します。ただし、不服がある当事者は2週間以内(同法286条2項、279条2項)であれば、異議申し立て(同法286条1項)をすることにより、調停に代わる審判を無効にすることができます(同法286条5項前段)。したがって、調停に代わる審判には強制的に離婚を成立させる効力はないと言えます。

3 裁判上の離婚
 調停を経ても離婚の合意ができなかった場合は、離婚の訴えを提起することができます。この離婚裁判で離婚が認められれば、相手方が離婚を拒否していても強制的に離婚することができます。ただし離婚が認められるためには、民法で定められた離婚事由がなければいけません(民法770条1項)。民法が規定する離婚事由は次の5つです。
1号 配偶者に不貞な行為がったとき
2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき
3号 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき 
4号 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5号 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
それぞれの離婚事由についてみていきましょう。
(1)配偶者に不貞な行為がったとき
「不貞な行為」とは、婚姻している者が自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と性的な関係をもつことです。この定義によると、たとえどれだけ親密な関係となっていても、性的な関係をもっていなければ「不貞な行為」には当たりません。世間一般で浮気や不倫と言われるものでも、法律上の「不貞な行為」に当たるとは限らないので注意が必要です。
また、「不貞な行為」があったことは離婚を請求する側が証明しなければなりませんが、性的な関係をもったことを直接証明する証拠はなかなか入手できないので、立証に苦労することが多いです。この点にも注意した方がいいでしょう。
(2)配偶者から悪意で遺棄されたとき
 夫婦には、同居、協力、扶助義務(民法752条)があります。悪意の遺棄とは、婚姻倫理から見て非難される態様でこの夫婦の義務に違反する行為をすることです。例えば、合理的な理由なく配偶者や子供を放置して別居する場合や、収入がありながら婚姻費用の分担をしない場合などです。
(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
 配偶者の生死が3年以上不明である場合は、婚姻を継続する意味がないので、離婚原因とされています。
 なお、配偶者の生死が7年間明らかでない場合も、失踪宣告制度により死亡したものとみなされ(民法30条、31条)、婚姻関係が終了します。しかしこの場合は、失踪した配偶者について相続が開始し、残された配偶者は相続人となる点が離婚とは異なります。
(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
 配偶者が重い精神病に罹患することは、婚姻共同生活を円満に維持・継続させることが困難となるため、離婚原因とされています。しかし、精神病に罹患した配偶者からすると、自己の責任ではないにもかかわらず、経済的援助などの支援を受けられなくなるということであり、酷です。したがって、この要件での離婚は簡単には認められない傾向にあります。
(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
 1号から4号までの離婚事由以外にも、離婚したいと思う事情は色々あるかと思います。例えば、
・長期間の別居
・虐待、暴力、ハラスメント、重大な侮辱
・不就労、浪費、借財
・犯罪行為、服役
・疾病、性的不能を含む障害
・過度の宗教活動
・性格の不一致、親族との不和
などです。これらの事情は個別に離婚原因として認められているわけではないので、これらの事情があるからといって直ちに離婚することはできません。しかし、これらの事情も含めた全ての事情を総合して、客観的に婚姻関係が破綻していると認められる場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」として離婚することができます。
(6)裁判所による裁量棄却(民法770条2項)
 裁判所は、1号から4号までの離婚事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができます。従って、1号から4号までの離婚原因があるからといって必ずしも離婚が認められるとは限りません。

4 まとめ
 以上が離婚をするための手続きと裁判で離婚が認められるための要件についての解説になります。長くなりましたので今回はここまでにして、次回で親権や面会交流など、離婚に伴って決めるべき諸問題について解説したいと思います。

ひとりで悩まずに、新たな第一歩を、私たちと。

弁護士法人 山本・坪井綜合法律事務所 長崎オフィス
弁護士 坪井智之


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