弁護士ブログ
2025/01/06
泥酔して隣の家に入ってしまった!?どんな罪になるのか弁護士が解説
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスの弁護士の寺町です。
年末年始でお酒を飲む機会が多いと思いますが、中には飲みすぎて痛い目にあった方もいるのではないでしょうか?大体は笑い話で終わるものでしょうが、笑い話で終わらないニュースも飛び込んできています。なんと某人気俳優が泥酔して自宅マンションの隣の部屋に無断で侵入し、警察の捜査を受けているとのこと。
さて、この事件のネット記事では警察は住居侵入の疑いで捜査を進めていると書いてありました。ではこのようなケースで住居侵入罪(刑法130条前段)が成立するか、ちょっと真面目に考えてみましょう。
住居侵入罪は「正当な理由がないのに、人の住居・・・に侵入」した場合に成立します。また故意(38条1項本文)として「正当な理由がないのに、人の住居・・・に侵入」することの認識が必要です。
まず、「正当な理由がないのに、人の住居・・・に侵入」したと言えることについては問題ないでしょう。そして泥酔していたとのことなので自分の部屋ではないことを認識していなかった可能性もありますが、記事によると「トイレをしたくて勝手に入ってしまったと思います」と供述しているとのことですから、故意も認められると考えます。
さて、ここまで読んでくださっている方の中には、トイレを我慢できなかった場合であれば仕方ないのではないか、正当防衛(36条1項)になるのではないかと思う方もいるかもしれません。しかし、正当防衛は「急迫不正の侵害」に対して行うものであり、隣の部屋の住人の方が不正な侵害行為を行っていなければ成立しないものですから、正当防衛は成立しません。また、緊急避難(37条1項本文)が成立して犯罪にならないケースも考えられはしますが、通常は自分の部屋が隣なのに、隣の部屋に入る以外に方法がないというようなケースは考えにくいので一般的には緊急避難の成立も難しいでしょう。
もっとも、記事によると酒を飲んでいて記憶がないとのことなので「心神喪失」(39条1項)、もしくは「心神耗弱」(同条2項)状態であったとの主張も考えられます。では「心神喪失」もしくは「心神耗弱」は認められるでしょうか。「心神喪失」とは、精神の障害により事物の理非善悪を弁識する能力又はその弁識に従って行動する能力のない状態をいい、「心神耗弱」とは、その能力が著しく減退した状態をいいます。この点については記事の情報だけでは何とも言えません。飲酒の量や言動などから判断するしかないところです。
よって今回のケースでは、「心神喪失」や「心神耗弱」が認められない限りは、住居侵入罪が成立する可能性があります。
今回は事件をキャッチーに取り扱いましたが、このような飲酒トラブルは誰にでも起こりえますし、当然その際に警察沙汰になることも往々にしてあります。トラブルを起こしてしまった、警察の捜査を受けていてどうしたらよいか分からないと言った方は是非、山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスにご相談ください。刑事事件を数多く扱っている弁護士が在籍していますので、ご依頼者様をしっかりサポートいたします。
一人で悩まず、新たな一歩を私たちと。