弁護士ブログ
2025/01/25
配偶者暴力等に関する保護命令申立について
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所 長崎オフィスでは、初回無料で様々なお困りごとについての法律相談を承っております。
ご相談者の中には、配偶者もしくは内縁のパートナーからの暴力に悩まれている方も多くいらっしゃいます。
今回は、近年、法改正もなされて、認められる範囲が広がった「配偶者暴力等に関する保護命令申立」について、お話させていただきます。
1 はじめに
保護命令制度とは、「配偶者や生活の本拠を共にする交際相手からの身体に対する暴力等を防ぐため、被害者の申立てにより、裁判所が、加害者に対し、被害者へのつきまといをしてはならないこと等を命ずる命令」を裁判所に求めるものです。
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の一部を改正する法律(令和5年法律第30号。以下「令和5年改正法」という。)が令和5年5月12日に成立し、同年5月19日に公布されました。令和5年改正法は、一部の規定を除き、令和6年4月1日から施行されました。保護命令申立に関する法改正があり、令和6年4月1日以降、以下の通り、認められる範囲が拡大しました。
(1)申立ができる被害者の対象
接近禁止命令等の申立てができる被害者は、
・身体に対する暴力(実際に殴る・蹴るなどの暴力)を受けた者
・生命・身体に対する脅迫(「殺すぞ」などといった生命・身体
に対する害悪の告知による脅迫)を受けた者
に限定されておりました。
法改正後では、申し立てができる被害者に、「自由、名誉、財産に対する脅迫を受けた者」が追加されました。
加えて、命令の発令要件が以下のとおり拡大されました。
改正前)生命・身体に対する重大な危害を受けるおそれが大きいとき
改正後)生命・「心身」に対する重大な危害を受けるおそれが大きい
とき保護命令の種類の拡大
(2)「被害者への電話等禁止命令」の対象行為の追加
従前の対象行為に加えて、以下の行為の禁止を求めることも可能となりました。
・緊急時以外の連続した文書の送付・SNS等の送信
・緊急時以外の深夜早朝のSNS等の送信
・性的羞恥心を害する電磁的記録の送信
・GPSを用いた位置情報の無承諾取得
さらに、「被害者の子への電話等禁止命令」が新設されております。
対象行為は、「行動監視の告知等」「著しく粗野乱暴な言動」といった8つの行為です。
(3)命令の有効期間の伸長
被害者への接近禁止命令の有効期間が6か月から1年に伸長されました。
また、退去等命令の期間は、原則2か月ですが、住居の所有者または賃借人が被害者のみである場合、被害者からの申立てにより6か月とする特例が新設されました。
(4)厳罰化
保護命令に違反した者に対する罰則が、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」から、「2年以下の拘禁刑※または200万円以下の罰金」へと加重されます。
※2025年5月31日までは「懲役」。刑法等の改正に伴い、2025年6月から「拘禁刑」。
2 申立の方法について
(1)事前相談
まず、配偶者から暴力を受けた方(以下、「被害者」といいます。)が、保護命令申立を行うためには、事前に警察や配偶者暴力相談支援センターに相談をすることが必要です。
これは、相談機関へ赴いて相手方からの暴力を受けたことについて、申立書に、相談した事実を記載しなければならないためです。
事前に相談なき場合には、公証人役場において相手方から暴力を受けたことなどについての申立人の供述を記載し、その供述が真実であることを公証人の面前で宣誓して作成した宣誓供述書を保護命令の申立書に添付する必要があります。
(3)申立書の作成
申立書には、申立の趣旨(退去命令、接見禁止、電話連絡等禁止、子への接近禁止、親族等への接近禁止等、どの範囲での保護命令を求めるか)および申立の理由(相手方との関係や、どのような暴力等があったかについて、保護命令の必要性)等について記載します。
(4)必要書類
申立書は、正本(裁判所用)と副本(相手方用)の2部をご用意します。
また、添付書類として、当事者の戸籍および住民票、その他にも、
・退去命令を求める場合には建物の登記の現在事項証明書や
賃貸借契約書等
・15歳以上の子への接近禁止や親族等への接近禁止命令の
申立てをする場合には同意書
・生活の本拠を共にする交際の場合(婚姻関係における共同
生活に類する共同生活を営んでいない者を除く。)は、
生活の本拠を共にする事実を証明する書類
の提出が必要になる等、事案によって必要書類が異なるため、確認が必要です。
加えて、診断書・写真・陳述書などを証拠として提出いたします。
(5)申立手数料等
申立の手数料として、収入印紙1000円が必要となります。
また、相手方への副本送達用の郵券を付する必要があります。
3 申立から申立後の流れ
申立書等一式は、管轄の地方裁判所宛に提出します。
保護命令申立の管轄は、(1)相手方の住所(日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所)、(2)申立人の住所又は居所、(3)身体に対する暴力等が行われた地のいずれかとなります。
申立書を提出した後は、被害者の審尋期日が指定されます。これは、裁判官が、申立書等をもとにして申立てについての詳しい事情の聞き取りを行うためです。
その後、原則として約1週間後に、相手方のみの審尋期日が指定され、相手方が裁判所に呼び出されます。
相手方審尋を一度開催することで十分な心証を得られたときは、その期日において保護命令が発令されることがありますが、双方の言い分が大きく異なっているときなどは、改めて申立人及び相手方から詳しい事情をお聞きするために更に審尋期日が指定されることがあります。
双方からの詳しい事情を確認後、裁判所により、保護命令の申立てについての決定がされます。
4 最後に
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所 長崎オフィスでは、配偶者等からの暴力に関するご相談から、婚姻関係や内縁関係の解消に関するご相談も受付しております。
ご依頼いただいた場合には、お客様ファーストで寄り添い、サポートさせていただきます。
初回のご相談は、無料で実施させていただいておりますので、お困りの際は、一度、弊所宛にご連絡ください。
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