法律相談コラム

2022/03/07

未決勾留について

Q  刑事事件の裁判の判決で、「被告人を懲役〇年に処する。未決勾留日数中△△日をその刑に算入する。」と言われましたが、未決勾留って何ですか?

A
1 未決勾留とは
 「未決勾留」とは、日本の刑事手続において、犯罪容疑で逮捕されてから、判決が確定するまでの刑事施設に勾留されている状態のことを言い、その期間を、未決勾留日数と言います。

未決勾留は、刑法第21条に、「未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる。」と規定され、裁判所は、判決で刑の言渡しをする場合、裁量により、未決勾留日数の全部又は一部を刑期に算入することができるとされています。つまり、未決勾留は必ず考慮されるものではなく、原則として、裁判官の裁量に委ねられています。

2 未決勾留日数の算入
 未決勾留日数は、刑事施設に勾留されている日数のすべてが、刑期に算入されるわけではありません。
実務では、起訴前の勾留については算入されず、起訴後の勾留日数のうち、裁判準備のために通常必要とされる期間を超える日数分だけ算入されることになります。

裁判準備のために通常必要とされる期間とは、

➀第1回目公判(初公判)については、30日
➁第2回以降については、各公判あたり10日
 と考えられています。

未決勾留日数の算入により、算入された日数分だけ刑に服したものとみなされ、実質的にその分刑期が短くなります。

未決勾留日数が算入される刑罰については、
懲役、禁固、罰金、科料
があげられます。
 
 執行猶予付きの懲役刑・禁固刑についても、執行猶予が取り消される可能性があることから、未決勾留を算入することができます。

罰金や科料の財産刑の場合にも、算入することができるが、実例は少なく、被告人に罰金を支払う資力がなさそうな場合は、正式裁判にした上で、未決勾留日数を金銭に換算して、「被告人を罰金10万円に処する。未決勾留日数のうち、その1日を金5,000円に換算して、その罰金額に満までの分をその刑に算入する。」と言い渡します。
 また、実刑判決の懲役刑で、懲役刑の期間が短いが、長期に渡って勾留されたことから、未決勾留日数が長く算入され、刑が確定した後、服役しなくても済む場合等もあります。
 
3 必ず未決勾留日数が算入される場合
 未決勾留日数の算入は、裁判官の裁量に委ねられていますが、法律上必ず未決勾留日数が算入されることとなっている場合があります。

刑事訴訟法第495条1項は、「上訴の提起期間中の未決勾留日数は、上訴申立後の未決勾留の日数を除き、全部これを本刑に通算する。」と定めています。
つまり、上訴を申し立てた場合は、判決言渡し日から上訴を申し立てた日の前日までの日数が算入されます。

また、上訴の申し立てが検察官であるときや、被告人が上訴を申し立て、上訴審において原判決が破棄されたときは、上訴を申し立ててから判決日の前日又は判決確定の日の前日までの日数が未決勾留として必ず算入されます。

 さらに、控訴を申し立てなかった場合は、判決言渡しから15日間が必ず未決勾留として算入されます。

 当弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所は、刑事事件を専門の一つとする法律事務所であり、刑事事件に経験豊富な弁護士がご相談をお受けし、適切なアドバイスを致します。

 ご家族や知人が刑事事件を起こしてしまったり、巻き込まれてしまい、お困りの方は、当長崎オフィスにご連絡ください。

法律相談コラム

2022/03/07

保釈請求について

1 保釈とは
逮捕勾留によって起訴され、身体を拘束されている被告人のみに対し、一定の条件を付して身柄を解放する制度です。保釈が認められないと被告人としての勾留は刑事裁判が終わるまで続けられます。
  
保釈には、「権利保釈」、「裁量保釈」と「義務的保釈」の3種類がありますが、大半は「権利保釈」と「裁量保釈」となっています。

□権利保釈
保釈の請求があった場合、要件を満たしていたならば、必ず認められるものですが、一定の除外事由に該当する場合は、保釈は却下されます。(刑事訴訟法第89条)

□裁量保釈
権利保釈が認められない場合でも、逃走・罪証隠滅のおそれの程度、その他身体拘束
により受ける健康上、経済上、社会生活上、防御の準備上の、不利益の程度等を勘案して、裁判所の職権で保釈されるものです。(刑事訴訟法第90条)

□義務的保釈
勾留による拘禁が不当に長くなった場合は、裁判所が義務的に保釈する制度ですが、
義務的保釈はあまり多くありません。(刑事訴訟法第91条)

2 保釈の請求権者
 保釈の請求権者は、勾留されている被告人、またはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族もしくは兄弟姉妹です。(刑事訴訟法第88条)

3 保釈請求の時期など 
 保釈請求の方法は、裁判所に対し書面または口頭で請求しますが、実務では書面にて請求されます。
請求の時期は、何ら制限はありません。
また、請求の撤回について規定はありませんが、保釈許否の裁判があるまでは撤回することができます。

4 保釈請求の失効
 保釈の請求が失効するのは、保釈、勾留の執行停止、勾留の取消しがあったとき、または勾留状の効力が消滅したとき、効力を失います。

5 保釈の条件
 保釈の可否が検討されるときは、まず権利保釈の要件に合致するのか、判断されたうえで、権利保釈が認められない場合は、裁量保釈を認めるべきか、検討されます。

 権利保釈は、被告人の権利として原則的に認められるのですが、以下の6つの除外事由にあたる場合は、認められません。

・死刑、無期、短期1年以上の懲役または禁錮にあたる罪を犯した
・過去に死刑、無期、長期10年を超える懲役または禁錮にあたる罪で、有期判決を受けたことがある
・常習として長期3年以上の懲役または禁錮にあたる罪を犯した
・罪証隠滅のおそれがある
・被害者や証人に対して危害を加える恐れがある
・氏名または住居が明らかでない
   
これらの除外事由に該当する場合は、さらに裁量保釈を認めるべきか、検討されます。   

裁量保釈の考慮の要素としては、
・被告人が逃亡・罪証隠滅を図るおそれの程度
・勾留による身柄拘束で、被告人が健康上、経済上、社会生活上、防御の準備上の不利益の程度 等があげられます。

さらに、事実の認否、共犯者の有無、示談成立の有無、想定される量刑、証拠の状況、保釈の監督環境などを踏まえて、総合的に判断されます。

6 保釈保障金
 裁判官が保釈を認めた場合は、「保釈保証金(保釈金)」を裁判所に納付しなければなりません。(刑事訴訟法第94条第1項)

保釈金の金額には、法律による決まりや相場はありませんが、被告人の裁判所への確実な出廷を担保するため、被告人の経済状況など様々な事情を考慮して決定されます。
保釈金を納付し、保釈されたとしても、所定の条件を破った場合は、保釈金の全部または一部が没収されます。

しかし、条件を守って裁判を受ければ、保釈金は返還されます。
   
保釈が決まったが保釈金が用意できない場合は、一般社団法人日本保釈支援協会による「保釈保証金立替システム」を利用することで、最大500万円までの立替を受けられます。

7 保釈中の制限
裁判所から保釈が認められたならば、保釈の条件として、被告人に対する制限が加えられます。

例えば、
・被告人の生活や行動を監視し、裁判所への出頭を促す身元引受人が存在すること
・裁判所の許可なく、転居、外泊、旅行しないこと
・被害者、証人、共犯者などと接触しないこと

などがあげられます。
   
これらの指定された保釈の条件に違反すると、保釈が取り消されたうえ、保釈金が没収されることがあります。

 以上のとおり、保釈請求は、裁判官に対し保釈を求める理由を明確に示さないと、裁判官が保釈を認めない可能性があることから、経験豊富な弁護士へ依頼することをお勧めします。
   
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスでは、これまで多数の保釈請求を行い、保釈を勝ち取ってきました。
控訴保釈、上訴保釈などの実績もあります。

保釈させたいと思ったらまずは当長崎オフィスへご連絡下さい。

法律相談コラム

2022/03/07

弁護人制度について

1  弁護人制度について
 弁護人制度については、憲法第34条前段で、「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されない。」と定められ、さらに同37条3項前段で、「刑事被告人は、いかなる場合でも、資格を有する弁護人を依頼することができる。」と規定し、弁護人を依頼する権利を、基本的人権の一つとして保障されています。
 これを受け、刑事訴訟法第30条1項において、「被告人または被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。」と弁護人の選任権が定められています。

 被疑者・被告人は、犯罪を行った嫌疑があるとして、捜査・訴追の対象とされており、その手続きの過程で、自由や権利が制限される危険がある立場に置かれます。

 そこで、被疑者・被告人が十分に自己の利益及び権利を防御するために、法律の専門家の援助を受ける必要が大きく、ここで刑事弁護人制度の必要性が重要となります。

2 弁護士の任務
 弁護人の任務は、憲法による弁護人依頼権の保障を受けて、被疑者・被告人の権利及び利益を擁護することとされています。
 弁護人が擁護し、保護すべきは、被疑者・被告人の正当な利益とされています。

3 弁護人の義務
 弁護人は、被疑者・被告人の権利・利益の擁護という任務を果たすために、訴訟上の権利ないし権限を誠実に行使すべき義務を負っており、弁護士法第1条2項に、「弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」と規定され、これを誠実義務といいます。

 被疑者・被告人の権利・利益の擁護を離れた公的利益の追求は、弁護人の任務ではない立場から、裁判所の真実発見に積極的に協力する義務の真実義務はないものと解されています。

 弁護士の義務については、刑法や刑事訴訟法等に散在し、また弁護士法にも規定されております。例えば、弁護士法第23条の「弁護士又は弁護士であった者は、その職務上、知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」(秘密保持の権利及び義務)などです。

また、弁護士は裁判制度にかかわることを職務とするものとして、裁判の公正及び手続の適正を実現するために努力することが求められています。

法律相談コラム

2022/03/07

当番弁護士制度について

 弁護士が、刑事弁護として依頼を受けるのは、大きく分けて「身柄事件か、在宅事件か」、そして「私選か、当番・国選か」です。
 
 身柄事件では、私選弁護人又は当番派遣として弁護士の関与が開始され、要件を満たせば被疑者国選(起訴後は、被告人国選)として弁護人活動を行います。
 また、在宅事件では、起訴前の活動には「国選」という概念がありませんので、私選として活動を行います。

 それでは、当番弁護士制度について、お話しします。
   
1 当番弁護からの受任
 当番弁護は、各弁護士が所属している弁護士会が、身柄が拘束されている被疑者・被告人やその家族・知人から接見の依頼があった場合、当番の弁護士を1回だけ、無料で接見するよう派遣し、被疑者・被告人の相談に一早く応じる制度です。

2 当番弁護の待機
 弁護士会の当番弁護士名簿に登載された弁護士は、割り当てられた当番日において、派遣要請に応じて直ちに接見に出動することができるように、待機場所にて待機します。待機場所は通常は事務所ですが、休日は携帯電話や自宅の電話を指定した上で、待機します。

3 派遣要請の連絡
 弁護士会からの派遣要請は、電話及びファックスによって行われます。配点連絡票には、被疑者の氏名、フリガナ、性別、国籍、使用言語、生年月日、罪名、留置場所などが記載されています。
連絡を受けた弁護士は、原則としてその日のうちに接見することが求められます。
被疑事実の具体的内容や認否は、この時点では不明です。

4 警察署への事前確認・接見
 弁護士会から派遣要請を受け、留置されている警察署に接見(面会)に行きます。
 被疑者の取り扱い警察署と留置場所の警察署が異なる場合がありますので、注意が必要です。
 この時点では、まだ弁護人として選任されていないため、「弁護人となろうとする者」の立場で接見することになります。

5 私選弁護人としての選任
 当番弁護で接見した場合、被疑者から私選弁護人選任の申し込みがあれば、接見した当番弁護士が受任することができます。
 私選弁護人として受任しない場合は、勾留決定前であれば、法テラスの刑事被疑者弁護援助制度を利用できますが、勾留後は刑事被疑者弁護援助制度を利用できないため、被疑者国選弁護制度になるしかありません。

6 国選弁護人選任への移行
 当番弁護士自らが、被疑者の国選弁護人として、選任されることも可能です。

7 接見の報告
 接見終了後、弁護士会に対して、接見報告書を提出します。

8 当番弁護士としての終了
 当番弁護士として派遣されたが、被疑者から受任依頼がない、または受任申し出があっても受任しない場合は、当番弁護士としての活動は終了します。

弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所では、当番弁護士よりも早く面会に行けることを目指しております。
ご家族が逮捕された場合は、まずは当事務所長崎オフィスへお気軽にご連絡ください。

法律相談コラム

2022/03/07

刑法に関するQ&A 1

【刑罰の種類】
Q 刑罰の種類について教えてください。

A 犯罪を犯した場合に科せられる刑罰の種類については、刑法第9条に、「死刑、懲役、禁固、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。」と定められています。

 刑罰の種類の「死刑」、「懲役」、「禁固」、「罰金」、「拘留」、「科料」及び「没収」について、説明します。

1 死刑とは
 「死刑」とは、受刑者の生命を奪う刑で、死刑の言い渡しを受けた場合、死刑執行まで、刑事施設に収容され、絞首によって死刑執行されます。(刑法第11条)
 人の生命を奪う刑罰であるため、一定の重大な犯罪に対する刑罰として法定されており、刑法犯では、
    ・内乱罪(刑法第77条1項)
    ・外患誘致罪(刑法第81条)
    ・外患援助罪(刑法第82条)
    ・現住建造物等放火罪(刑法第108条)
    ・激発物破裂罪(刑法第117条)
    ・現住建造物等浸害罪(刑法第119条)
    ・列車転覆致死罪(刑法第126条)
    ・往来危険による汽車転覆等罪(刑法第127条)
    ・水道毒物混入致死罪(刑法第146条後段)
    ・殺人罪(刑法第199条)
    ・強盗致死罪(刑法第240条後段)
    ・強盗強制性交等致死罪(刑法第241条後段)

の12種類があります。また、特別刑法犯として、
    ・爆発物使用罪(爆発物取締罰則第1条)
    ・航空機強取等致死罪(航空機の強取等の処罰に関する法律第2条)
などが規定されています。

 尚、犯罪を犯したとき、18歳未満であった者に対しては、死刑を科すことはできません。(少年法第51条)

2 懲役とは
 「懲役」とは、受刑者の身体を拘束して自由を奪う自由刑の一つで、刑事施設に拘置して、刑務作業に服させる刑罰です。(刑法第12条)

 懲役には、有期懲役と無期懲役があり、有期懲役は、1か月以上20年以下とされていますが、併合罪などで刑を加重する場合や、死刑や無期懲役を軽減する場合には、30年まで引き上げることができます。(刑法第14条)

3 禁固とは
 「禁固」とは、懲役と同様、受刑者の身体を拘束して自由を奪う自由刑の一つで、刑事施設に拘置する刑罰ですが、刑務作業は課されません。(刑法第13条)

 禁固にも、懲役と同様に、無期と有期の場合があり、有期禁固は、1か月以上20年以下とされています。また、懲役と同様に、刑を加重する場合は、30年まで引き上げることができ、軽減する場合には1か月未満に引き下げることができます。
    
なお、禁固刑の受刑者も希望すれば、作業につくことができます。

実務上は、自動車運転過失致死傷罪など、過失犯に言い渡される場合が多いです。

4 罰金とは
 「罰金」とは、受刑者の一定の財産を奪う財産刑の一つで、1万円以上の金銭を国に納付させる刑罰です。(刑法第15条)

 罰金の上限額は、各犯罪の法律で定められており、例えば、窃盗罪では「50万円以下の罰金」となっています。罰金が支払えない場合は、1日以上2年以下の期間で、労役場に留置され、日当換算して、罰金相当を支払い終わるまで、労務につきます。
 裁判の確定から30日以内に罰金を納めない場合は、労役場に留置されることとなります。

5 拘留について
 「拘留」とは、懲役、禁固と同様、受刑者の身体を拘束して自由を奪う自由刑の一つで、1日以上30日未満、刑事施設に拘置する刑罰です。(刑法第16条)
 懲役刑と異なり、労務作業につくことはありません。侮辱罪などの法定刑に規定されています。

6 科料とは
 「科料」とは、罰金と同様、受刑者の一定の財産を奪う財産刑の一つで、千円以上1万円未満の金銭を国に納付させる刑罰です。(刑法第17条)
 科料が支払えない場合は、1日以上30日以下の期間で、労役場に留置され、日当換算して、科料相当を支払い終わるまで、労務につきます。
 裁判の確定から10日以内に科料を納めない場合は、労役場に留置されることとなります。

7 没収とは
 「没収」とは、死刑、懲役、罰金、拘留、科料の主刑に付け加えて言い渡される刑罰で、犯罪行為に不可欠の物、犯罪に使われた物、犯罪行為によって作られた物、犯罪行為によって得た物、犯罪行為によって作られた物の対価として得た物などの所有権をはく奪し、国庫に帰属させる刑です。(刑法第19条)

 犯人以外の物であっても、その人が犯罪の後に、その犯罪の事情を知って得た物であれば、その物も没収の対象となります。
 没収を言い渡されたのに、対象物の全部又は一部を納められないときは、その価格を追徴されることとなります。
 例えば、覚せい剤や大麻などの薬物事犯における違法薬物、偽造文書や通貨偽造事犯における偽造された文書や偽造通貨などが、没収の対象となります。

刑事事件でお悩みの際はいつでも弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスへお電話ください。

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