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法律相談コラム
2022/04/03
成年年齢の引下げ
2022年4月1日から、民法で定める成年年齢が現行の20歳から18歳に引き下けられました。
1876年(明治9年)の「太政官布告」以来、実に140年ぶりに、成年の定義が見直されることで、若者たちの生活にどのような影響があるのでしようか、また何が変わるのでしようか。
1 「成年年齢」はいつから変わる
我が国では、成年年齢は20歳と民法で定められていました。この民法が改正され、2022年(令和4年)4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に変わりました。
これによって、2022年4月1日に、18歳、19歳の方は新成人となります。
現在、未成年の方は、生年月日によって新成人となる日が異なります。
2 成年(18歳)になったらできること
⑴ 親の同意がなくても契約できる。
民法が定める成年年齢には、「一人で有効な契約をすることができる年齢」という意味と、「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味があります。
成年に達すると親の同意を得なくても、自分の意志で様々な契約ができるようになるということです。
例えば、
・携帯電話の契約
・クレジットカードを作る
(審査結果、クレジットカードの契約ができないことがある)
・一人暮らしのためアパートを借りる
・ローンを組んで自動車や高級品を購入する
(返済能力を超えるローンの契約はできないことがある)
などの契約ができるようになりました。
⑵ 進学や就職などの進路決定を自分で決められる。
もっとも、進路決定には、親や学校の理解を得ることが大切です。
⑶ 10年有効のパスポートを取得する。
⑷ 公認会計士や司法書士、医師免許、歯科医師免許、薬剤師免許、獣医師免許、土地家屋調査士、行政書士、社会保険労務士などの国家資格を取る。
⑸ 結婚
女性の結婚可能年齢が、16歳から18歳に引き上げられ、男女ともに18歳になります。
なお、2022年4月1日の時点で、既に16歳以上の女性は、引き続き、18歳未満でも結婚することができます。
⑹ 性同一性障害の人が性別の取扱いの変更審判を受けられる。
⑺ 人権擁護委員・民生委員になる資格が得られる。 など
3 20歳にならないとできないこと
⑴ 飲酒すること。
⑵ 喫煙すること。
⑶ 競輪、競馬、オートレース、競艇などの公営競技の投票券(馬券など)を買うこと。
→飲酒や喫煙、ギャンブルは健康面への影響や非行防止、青少年保護などの観点から、従来の年齢要件が維持されました。
⑷ 養子を迎えること。
⑸ 大型・中型自動車運転免許を取得すること。
⑹ 国民年金の加入義務、国民年金保険料納付義務
⑺ 猟銃の所持の許可
⑻ 指定暴力団等への加入強要が禁止される者の年齢 など
4 養育費に関して
子ども養育費については、「子が成年に達するまでの養育費を支払う」との取り決めがなされた時点において、成年年齢が20歳であれば、当初の約束どおり、子どもが20歳になるまで支払い義務があると考えられます。
また、養育費は、子どもが未成熟であって経済的に自立することをきたいすることができない場合に支払われるものなので、子どもが成年に達したとしても、大学進学などで経済的・社会的に自立しているとはいえない状態であれば、引き継き、養育費を支払う義務を負うことになります。そのため、成年年齢が引き下げられたからといって、養育費の支払い期間が、当然「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。
今後、新たに養育費の取り決めをする場合には、「○○が大学を卒業する年(22歳)の3月末まで」のように、明確に支払い期間の終期を定めることが望ましいと考えられます。
5 消費者トラブルに遭わないために
未成年者の場合では、契約には親の同意が必要です。
もし、未成年者が親の同意を得ずに契約した場合には、民法で「未成年者が親の同意を得ずに契約した場合は、原則として、契約を取り消すことができる」(未成年者取消権)と定められており、その契約は取り消すことができます。この未成年者取消権は、未成年者を保護するためのものであり、未成年の消費者被害を抑止する役割を果たしています。
成年年齢を18歳に引き下げた場合は、18歳、19歳の方は、未成年取消権を行使することができなくなりした。つまり、契約を結ぶかどうかを決めるのも自分なら、その契約に対して責任を負うのも自分自身になります。
一旦締結した契約は、原則として守らなければなりません。
そのため、契約上の義務などを怠るとトラブルに巻き込まれたり、消費者被害に遭う可能性もあります。
契約書にサインする前に、自分にとって本当に必要な契約かをよく考え、リスクやトラブルになり得る点がないかどうかよく確認しましょう。
契約をするように強く迫ってきたり、支払いを急がされたりする場合は、注意が必要で、一旦書類を持ち帰るなどして、しっかり検討することが大切です。
契約をしてしまった場後でも、相手に騙されたり、脅迫されたりして結んだ契約は、取り消しが可能です。
また、美容医療関係や英会話教室等の契約では、クーリングオフという制度を使って取り消すことができます。
そうした消費者トラブルに遭わないためには、未成年のうちから、契約に関する知識を学び、様々なルールを知った上でもその契約が必要かよく検討する力を身につけておくことが重要です。
もしトラブルに遭ってしまった場合は、一人で抱え込まず、家族や信頼できる友人や弁護士、消費生活センター等の相談窓口などに相談することが大切です。
刑事事件
2022/04/03
改正少年法
事件を起こした18歳、19歳について、一定の厳罰化を図る少年法等の一部を改正する法律(改正少年法)が、2022年(令和4年)4月1日に施行されました。
選挙権年齢や民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことにより、整合性を図る目的で行われました。
改正少年法は、18歳・19歳の者が、犯罪を犯した場合には、その立場に応じた取扱いとするため、「特定少年」として、17歳以下の少年とは異なる特例を定めています。
それでは改正少年法の内容について、説明します。
1 少年法の目的
少年法とは、少年の健全な育成を図るため、非行少年に対する処分やその手続きなどについて定める法律です。
少年法第1条で、少年法の目的を「非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の処置を講ずること」と定めています。
2 少年法における手続き・処分
少年事件については、検察官が処分を決めるのではなく、全ての事件が家庭裁判所に送られ、家庭裁判所が処分を決定します。家庭裁判所は、少年に対し、犯罪の事実や少年の生い立ち・性格・家庭環境などを調査します。その後、家庭裁判所が少年に対する処分を決定します。
家庭裁判所が少年に対して行う処分には、主に「検察官送致(逆送)」、「少年院送致」、「保護観察」などがあります。
検察官送致(逆送)は、家庭裁判所が、保護処分ではなく、懲役、罰金などの刑罰を科すべきと判断した場合、事件を検察官に送る手続きです。逆送された事件は、検察官によって刑事裁判所に起訴され、刑事裁判で有罪となれば、刑罰が科せられます。
これに対して、少年院送致と保護観察はいずれも保護処分であり、少年院送致は、少年を少年院に収容して処遇を行う処分、保護観察は、少年に対して社会内で処遇を行う処分です。
3 保護処分と刑罰の違い
少年法の対象となる少年には、原則、「刑罰」ではなく、「保護処分」が下されます。
保護処分である少年院送致や保護観察は、少年の更生を目的として家庭裁判所が科す特別な処分であり、刑事裁判所が課す懲役、罰金などの刑罰とは異なるものです。
なお、少年院送致は対象を少年院に収容し、その特性に応じた矯正教育などを行うものです。
保護観察とは、対象者を施設に収容せずに、保護観察所が指導監督や補導援護を行うものです。
4 逆送と原則逆送対象事件
「逆送」とは、家庭裁判所が少年に対して、保護処分ではなく、懲役や罰金などの刑罰を科すべきであると考えた場合に、事件を検察官に送ることをいいます。事件が逆送された場合、検察官によって刑事裁判所に起訴され、刑事裁判で有罪となれば、刑罰が科せられことになります。
原則逆送対象事件とは、家庭裁判所が原則として逆送しなければならないとされている事件で、現行法では、「16歳以上の少年が、故意で犯罪行為により被害者を死亡させた罪(殺人罪、傷害致死罪など)の事件」が当てはまります。
5 改正少年法のポイント
⑴ 特定少年の厳罰化
改正少年法では、「20歳に満たない者」が「少年」として一律に保護対象とされることは維持された上、新たに18歳、19歳の少年を「特定少年」と定義し、17歳以下の少年とは異なる取扱いを受けるとともに、より厳しく罰する方針に変更されました。
⑵ 原則逆送対象事件の拡大
これまで、原則逆送対象事件は、「16歳以上の少年が故意で被害者を死亡させた罪の事件」のみを適用されました。
しかし、改正少年法では、「16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件」に加えて、「特定少年が犯した死刑、無期又は1年以上の懲役・禁固にあたる罪の事件」も追加され、原則逆送対象事件が拡大されました。
これにより、特定少年については、例えば、現住建造物等放火罪、強制性交等罪、強盗罪、組織的詐欺罪などが、新たに原則逆送対象事件となりました。
⑶ 実名報道の解禁
少年事件については、これまで犯人の実名・写真等の報道が禁止されていましたが、改正少年法では、特定少年の時に犯した事件について起訴された場合、実名や写真等の報道が許されるようになりました。
ただし、略式手続き(非公開の書面審理によって、一定額以下の罰金や科料を科す手続き)である場合は、解禁の対象外となります。
⑷ 保護処分に関する特例
改正少年法により、特定少年(18歳以上の少年)に対する保護処分の内容やその期間は、「犯情の軽重を考慮」して決定されることが明文化されました。
また、審判時に、保護観察は、6ヶ月か、2年のいずれか、少年院送致は3年の範囲で、保護処分の期間が明示されることとなりました。
⑸ 不定期刑の適用除外
特定少年(18歳以上の少年)は、逆送されて起訴された場合の刑事裁判では、原則として、20歳以上と同様に取り扱われ、不定期刑ではなく、明確な期間を言い渡すこととなりました。
例えば、判決で有期の懲役が科される場合は、17歳以下の少年には、最長15年以下の範囲で、刑の長期と短期を定める不定期刑(例として、懲役5年以上10年以下)が言い渡されるのに対し、特定少年には、20歳以上と同様に扱われることから、最長30年以下の範囲で定期刑(例として、懲役10年)が言い渡されることとなります。
⑹ 虞犯(ぐ犯)少年の適用外
特定少年については、民法上の成年となることなどを考慮し、将来、罪を犯したり、刑罰法令に触れる行為をするおそれがあること(ぐ犯)を理由とする保護処分は行われないこととなりました。
法律相談コラム
2022/04/03
婚姻費用について
Q 夫と離婚しようと思い、子どもを連れて、実家に帰りました。今仕事をしていないので、生活費に困っています。夫から生活費をもらうことができますか?
A 夫婦が別居する際などに、収入が少ない側が収入の多い側に生活費を求めることができます。その費用を「婚姻費用」と言い、夫に対して、婚姻費用を請求できます。
それでは、婚姻費用について、お話しします。
1 婚姻費用とは
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用をいいます。
離婚することを決めて別居を始めたが、専業主婦だったため収入がない場合やパート等で働いているが生活費が足りない場合などのとき、収入の少ない側が収入の多い配偶者に対し、離婚が成立するまで間、生活費の分担を求めるものです。
よく夫側から、「妻は勝手に出て行ったのだから、支払う義務はない。」と主張されることがあります。
民法上、「夫婦はお互いに扶助し合うべき義務を負っており、生活費についても互いに負担し合わなくてはならない」(民法第752条)と規定されおり、お互いを扶助する義務があることから、別居していたとしても、この義務はなくならず、収入の多い側(大抵は夫)は少ない側(大抵は妻)に対し、婚姻費用を支払わなくてはなりません。
婚姻費用には、住居費や食費、光熱費などの生活費と、子どもの養育費や教育費、医療費などが含まれます。
2「婚姻費用」と「養育費」との違い
よく似た言葉に「養育費」がありますが、養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことをいいます。
一般的には,子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用を意味し,衣食住に必要な生活費,教育費,医療費などがこれに当たります。
子どもを監護している親は,監護していない親から養育費を受け取ることができます。なお,離婚によって親権者でなくなった親であっても,子どもの親であることに変わりはありませんので,親として養育費の支払義務を負います。
このことから、養育費は、離婚後に両親の間で分担する未成熟子(経済的・社会的に自立していない子)の生活費であり、離婚後、子どもを監護している親に対して、子どもを監護していない親が支払うものです。
しかし、「婚姻費用」は、収入の多い配偶者が少ない配偶者に対し、夫婦が離婚するまでの間の配偶者や子どもの生活費などを分担するものです。
婚姻費用は、子どもの生活費に加えて配偶者の生活費なども分担しますので、一般的に、子どもの生活費の分担の養育費よりも高額となります。
3 婚姻費用の請求ができる場合、認められない場合
⑴ 婚姻費用の請求ができる場合
① 収入が多い側が生活費を家庭に入れない場合
同居中であっても、収入の多いものが生活費等を家庭に入れず、生活ができない場合は、収入の少ない側は多い配偶者に対して婚姻費用の請求が可能です。
② 別居した場合や別居して子どもを養育している場合
別居中であっても、夫婦の扶養義務がありますので、収入の少ない側は多い配偶者に対して、婚姻費用を請求できます。また、別居して子どもを養育している場合は、子どもの養育費を含めた婚姻費用を請求できます。
⑵ 婚姻費用の請求が認められない場合
① 不倫や暴力(DV)により、自らが別居原因を作った場合
不倫や暴力(DV)が原因で、配偶者が家を出て行って別居した場合は、別居された側が出て行った側に対して、婚姻費用を請求しても、認められなかったり、減額されることがあります。これは、請求する側に不倫や暴力(DV)などで婚姻関係が破綻した主たる責任があり、別居した場合には、請求は信義誠実の原則に反する又は権利の濫用であるとして、認められない可能性があります。ただし、子どもを引き取って監護している場合では、有責配偶者であるかどうかにかかわらず、子どもの養育費相当額のみの婚姻費用が認められることとなります。
4 婚姻費用の相場
婚姻費用の金額については、夫婦双方の収入状況や子どもの有無や人数、年齢によって異なりますが、基本的には、夫婦が別居前や別居後に話し合って決めます。
婚姻費を支払う側の収入が高ければ婚姻費用の金額は上がりますし、支払いを受ける側の収入が高ければ、婚姻費用の金額は下がります。
支払いを受ける側が未成年の子供を養育していると、子どもの分の婚姻費用が増額されますし、その子どもの人数が増えると婚姻費用は上がります。
また、子どもの年齢が15歳以上になると、私立学校へ進学したりすると子どもの教育費がかかるようになるので、婚姻費用が上がる可能性があります。
さらに、重度の障がいがある子どもを養育してる場合は、その治療費等について増額を求められます。
婚姻費用の金額は、当事者が話し合いで決めることとなりますが、家庭裁判所が婚姻費用の取り決めをするとき使われている「婚姻費用算定表」を参考として決める場合もあります。
※婚姻費用算定表による婚姻費用のシミレーション
① 夫婦のみの場合
夫(会社員)年収400万円、妻(会社員)年収300万円、子どもなし
→月額 1~2万円程度
② 夫婦、子ども1人の場合
夫(会社員)年収400万円、妻(専業主婦)所得なし、子ども1人(0歳)
→月額 6~8万円
③ 夫婦、子ども2人の場合
夫(会社員)年収500万円、妻(専業主婦)所得なし、子ども2人(3歳,8歳)
→月額 12~14万円
5 婚姻費用の支払い期限
婚姻費用の支払い期限は、請求した時から離婚が成立するか、別居が解消されるまでの間とされています。
なお、別居は家庭内別居も含まれますので、離婚を前提として自宅内で別居状態であれば、婚姻費用の請求は可能です。
婚姻費用の支払い義務が生じるのは、婚姻費用の請求の意思が明確になった時と考えられますので、婚姻費用の調停を申し立てた時、または、相手に対し、内容証明郵便等で婚姻費用の支払いの請求をした時点が開始の時と考えられます。
よって、別居後数か月経過し、相手に対して婚姻費用の請求をした場合、過去の別居時にさかのぼって婚姻費用の支払いを求めることは、難しいものと思われます。
そのため、別居したならば、速やかに弁護士に依頼するなどして、相手に対し婚姻費用を請求されることをお勧めします。
6 婚姻費用の請求方法
⑴ 別居前に話し合いで取り決める
婚姻費用を請求するときには、できる限り別居前に夫婦で話し合い、取り決めしておくのが望ましいです。
別居前に取り決めしておくと、別居後直ぐに生活費がもらえます。
取り決めした内容を口約束だけだと、相手が支払いに応じない場合には、婚姻費用分担請求調停の申し立てをしなくてはならないことから、話し合いで合意した内容を書面にしておくことをお勧めします。
⑵ 内容証明を送って請求する
相手が話し合いに応じてくれず、既に別居している場合は、内容証明郵便で請求することができます。
ただし、内容証明郵便で請求しても、強制力がないので、相手が無視すると婚姻費用はもらえません。
⑶ 婚姻費用分担請求調停をする
別居前に話し合っていても相手が支払ってくれなかったり、話し合いがつかなかった場合などは、家庭裁判所に、「婚姻費用分担請求調停」申し立てます。
婚姻費用分担請求調停を申し立てることで、家庭裁判所の調停委員2名に間に入ってもらい、婚姻費用の話し合いを進めることができます。
また、別居しており、離婚を望んでいるなら、「婚姻費用分担請求調停」と同時に、「離婚調停」を申し立てることをお勧めします。
⑷ 婚姻費用分担請求審判で、婚姻費用を決定してもらう
婚姻費用分担請求調停でも合意できなかった場合は、「調停」が「審判」に移行します。「審判」になると、裁判官が夫婦の収入状況や子どもの養育状況などから、妥当な婚姻費用の金額を決定し、相手に支払い命令を出します。相手が審判に従わない場合は、相手の給料や預貯金などを差し押さえることも可能となります。
婚姻費用の請求ができるのは、「婚姻費用分担請求調停を申し立てた時」からとなりますので、相手が婚姻費用を支払ってくれないのであれば、なるべく早く婚姻費用分担請求調停を申し立てることが有利となります。
7 婚姻費用分担請求調停の申立て方法
⑴ 申立人
夫または妻
⑵ 申立先
相手方の住居地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所
⑶ 申立に必要な費用
・収入印紙代 1,200円分
・連絡用の郵便切手代
⑷ 申立に必要な書類
・婚姻費用分担請求調停の申立書
・夫婦の戸籍謄本
・申立人の収入関係の資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書の写し等)
8 婚姻費用の仮払い
⑴ 婚姻費用分担請求調停を申し立てても、婚姻費用が決定されるまで数か月かかることから、その間の生活費が足らず、困ることがあります。
そこで、婚姻費用分担請求調停を申し立てる時に、「調停前の仮処分」の手続きを利用し、とりあえず先に一定額の支払いを裁判官や調停委員から相手方にお願いしてもらうことが可能です。
しかし、この「調停前の仮処分」は、「困っているみたいだから支払ってあげてくれませんか」と言った程度のもので、法的な強制力が一切ありません。この手続きを利用しても、婚姻費用の一部を支払ってもらうことができない可能性があります。
⑵ しかし、いったん調停が始まってしまえば、「審判前の仮処分」という手続きを取ることで、婚姻費用の支払いの命令を出してもらうことができます。この仮処分の命令が出た場合、相手は婚姻費用を支払わなければなりません。これでも相手が支払わない場合は、この仮処分に基づき、強制執行手続きを取ることが可能となります。
「審判前の仮処分」で、婚姻費用の仮払いを認めてもらうには、婚姻費用の分担調停または審判が家庭裁判所で継続していることが要件であり、また仮払いを求める金額を超える婚姻費用が認められる蓋然性が高いことと、生活上における差し迫った必要性などについて、主張・立証する必要があります。
婚姻費用の話し合いがまとまらない場合には、速やかに調停・審判を申し立てる必要があります。
しかし、婚姻費用分担調停請求の手続きの仕方がわからない方や相手と冷静に話ができる自信のない方、仕事をしていて調停や審判に出席することが難しい方などは、弁護士にご依頼することをお勧めします。
婚姻費用分担請求をされたい方や、請求されてその対応に困っておられる方は、弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスの弁護士にご相談ください。
当事務所の弁護士は、離婚問題に経験豊富な弁護士であり、多くの離婚問題を解決しております。
法律相談コラム
2022/04/03
離婚訴訟(裁判)の流れについて
Q 妻と離婚をするため、調停を起こしましたが不成立となりました。今後は、どうすればよいのでしょうか?
A 離婚を希望し、離婚調停を申し立てたが不成立となった場合や調停の取り下げをした場合のように家事調停で解決できなかった際には、離婚訴訟(離婚裁判)を起こすこととなります。
それでは、離婚裁判(訴訟)の流れについてお話します。
1 離婚訴訟(裁判)の基本的な流れ
⑴ 原則、離婚調停を経る(不成立又は取り下げ)
離婚訴訟は、訴える側(原告)と被告(訴えられる側)との間の法的な争点について、双方が意見を述べ、最終的に裁判官が判決という形で、判断を下します。
離婚訴訟を提起には、原則として、離婚調停を経てからではないと、提起することができません。
⑵ 家庭裁判所に訴状の提出
訴える側(原告)又訴えられる側(被告)の住所地を管轄する家庭裁判所に「訴状」を提出する。
離婚訴訟には、離婚そのものだけでなく、未成年の子どもがいる場合の親権、財産分与、年金分割、子どもの養育費や離婚に伴う慰謝料の請求についても申し立てることができます。
⑶ 第1回口頭弁論の通知・答弁書の提出
訴状が受理されると、被告には訴状の副本、口頭弁論呼出状が届きます。
被告は、その訴状に書かれている主張に対して反論する「答弁書」を提出することとなります。
通常、訴状が受理された日から、30日以内に裁判の期日(第1回口頭弁論)が指定されます。
⑷ 第1回口頭弁論期日
第1回口頭弁論期日では、通常、訴状の陳述や被告から提出された答弁書の陳述が行われます。
⑸ 争点整理手続き・証拠調べ
① 争点整理手続き
2回目以降の口頭弁論期日では、被告の答弁書に対する原告の反論が行われ、双方の主張、主張に対する反論を繰り返し、原告と被告が相互に主張を行っていき、争点を明確にしていきます。これを、争点整理手続きと呼ばれています。
② 証拠調べ
証拠調べとは、争点について、立証するために証拠資料を提出したり、証人尋問などを行う手続きを言います。
証拠資料の提出は、通常争点整理手続き中に行われますが、証人尋問等については、争点整理手続きにより争点が明確となった後、一括して行われます。
通常、証人尋問等は、裁判の終盤に行われます。
⑹ 裁判所からの和解提示
裁判が行われている間に、裁判所から和解が提示され、原告と被告の双方が離婚に合意することで、離婚が成立します。
これを、和解離婚と言います。
⑺ 原告側の全面受け入れ
裁判が行われている間に、被告側が原告の離婚請求を全面的に認めること(認諾)で、離婚が成立します。
⑻ 判決
証拠調べ等が終わると、口頭弁論の終結となり、原告の離婚請求を認めるか、棄却するかの判断がなされ、判決が言い渡されます。
判決が下されると、判決書が送達されます。判決内容に不服がある場合は、判決書の送達を受けた日から、2週間以内に控訴を提起することができます。
控訴しなければ、離婚の判決は確定します。
離婚を認める判決が確定すると、10日以内に、離婚届と「判決書」、「判決確定証明書」を市町村役場に提出します。
2 離婚裁判を申立てる場合の手続き
⑴ 裁判の訴状の提出先
原則として、訴える側及び訴えられる側の住所地を管轄する家庭裁判所に、離婚の訴状を提出します。
⑵ 訴訟(裁判)の申立てに必要な費用
収入印紙代+郵便切手代 (詳細は、家庭裁判所に確認してください。)
・ 離婚のみの場合
収入印紙代 1万3000円
・離婚+財産分与(年金分割)の場合
収入印紙代 1万3000円+1200円
・離婚+養育費の場合
収入印紙代 1万3000円+子供1人につき、1200円ずつ
・離婚+慰謝料の場合
収入印紙代 1万3,000円+慰謝料請求に対する印紙代を比較して高い方の金額
(例)離婚と慰謝料300万円を請求
慰謝料300万円の場合の収入印紙は2万円で、離婚のみを求める収入印紙代1万3000円よりも多額なので、この場合、2万円となる。
⑶ 訴訟の申立てに必要な書類
・訴状 2部
・夫婦の戸籍謄本及びその写し
・請求内容による必要となる書類
・年金分割に関する処分の申立てをする場合、「年金分割のための情報通知書」及びその写し。
・養育費に関する申立てをする場合、源泉徴収票、預金通帳など証拠なる書類のコピー 2部
3 離婚訴訟(裁判)を起こされた場合
⑴ 訴状の確認
離婚の訴訟を起こされた場合、家庭裁判所から口頭弁論呼出状が送られてきます。送られてきた呼出状の内容を確認し、離婚のみなのか、離婚と養育費に関する訴状であるのかなど、何に関する訴状であるか、確認が必要です。
⑵ 答弁書の作成
送られて来た口頭弁論呼出状には、訴状の内容が記載され、「答弁書」が同封されておりますので、定められた期日までに、その「答弁書」を家庭裁判所に提出してください。
「答弁書」には、訴状の内容を認めるか認めないかを明らかにし、認めないときはその理由を記載してください。
決められた期日までに「答弁書」を提出できない場合は、裁判所の担当者に連絡してください。
⑶ 裁判期日に出頭
口頭弁論呼出状に記載された期日に、指定された家庭裁判所に出頭し、裁判に臨んでください。
⑷ 裁判の長期化を防ぐ方法
裁判では、長期化を防ぐためにも、主張すべきことは、初期段階からすべて主張してください。
また、証拠についても、自分の主張の正当性を認めてもらうためにも、証拠をできるだけ早く集め、提出することが重要です。
離婚訴訟(裁判)は、離婚する方法としては、最終的に方法の一つとなります。
裁判では、法律に基づいて、主張し、立証を行う必要があります。
裁判には、法律的知識が必要とされ、 裁判の書面を準備したり、証拠を収集するには、手間や労力がかかりますし、精神力も必要となります。
離婚訴訟(裁判)は、自分で対応することが難しい面もありますので、弁護士にご相談し、依頼することをお勧めします。
特に、相手側が弁護士を代理人として、離婚の調停や訴訟を申し立てている場合などは、こちら側も弁護士にご相談されることをお勧めします。
当弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスの弁護士は、離婚問題に経験豊富な弁護士であり、多くの離婚問題を解決しております。
相手との離婚をお考えの方や相手から離婚の調停や訴訟の申立てをされた方、相手が急に家を出て行き、どうしたらよいか悩まれている方なとは、当事務所にご連絡ください。
当事務所の弁護士が、あなたにとって、最善の解決方法をご提案いたします。
まずは、ご連絡ください。
法律相談コラム
2022/03/18
未回収の家賃について
Q 家賃を払ってもらえず困っています
A 家賃を賃借人が滞納している場合,まずは賃借人に対し催告をする必要があります。
多くの場合,配達証明を付けた内容証明郵便で,期限を定め支払いを求めます。この方法であれば,郵便物を受け取った日時とその内容について証明を得ることができるため,裁判などになった場合に催告を行ったことの証拠となります。
賃借人が,この催告に応じない場合,調停や裁判などの訴えを起こし,裁判所に『賃貸借契約に基づく賃料支払い請求権』を認めてもらいます。
裁判で認められた,また支払いに合意する調停が成立しても,家賃の支払いが行われない場合には,強制執行という手続きもあります。
また,契約時に連帯保証人が付いている場合には,連帯保証人に支払ってもらうこともできます。
最終的に家賃の支払いがない場合には,賃貸借契約を解除し,建物の明け渡しを求めることもできます。
ただし,賃貸人からの契約解除の場合,信頼関係が破壊されたと言えるぐらいの事情が必要となります。
例えば,何度も家賃の支払いを求めたにもかかわらずに,賃借人が正当な理由なく数カ月にも及ぶ滞納をしているなどです。
家賃の滞納にも,様々な場合がありますので,まずはどのような状況であるかを専門の弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスでは,債権回収に関する相談も実績が豊富です。