- HOME
- 法律相談コラム
法律相談コラム
2022/10/20
過払い金請求について
「昔、ちょっと借りてただけなんだけどね」
「こんなに戻ってくるなんて思ってもみなかったよ」
CMなどでよく耳にするのではないでしょうか
過払い金請求とはなにかご存じですか?
貸金業者は、お金を貸しその分の利息を得ることによって利益を得ています。
金利が高ければ高いほど貸している側は多くの利益を得られることになります。
しかし借りる側は金利が高ければ高いほど、返済の負担が多く負担になってしまいます。
歯止めをかけるために、利息制限法によって利息の上限利率が決まっています。
元本10万円未満の場合、上限利率20%
元本10万~100万円未満、上限利率18%
元本100万円以上、上限利率15%
今は上限の利率が決まっていますが、2010年に出資法が改正されるまでは29.2%(グレーゾーン金利)なら利息制限法を超える金利で貸し付けることが可能であり、条件があるものの利息制限法を超える金利での支払いも有効なものとされていました。
高利を取る消費者金融が多く、歯止めをかけたのが2006年の最高裁判決、
払い過ぎた利息は元本に充当され、それでもなお残るものは過払い金として借主が取り戻せる可能性がある。これが過払い金請求にあたります。
過払い金が発生するのは、2010年6月17日以前の取引であり改正前民法が適用されるため、消滅時効の期間は10年であり
過払い金請求する権利は、最後に返済や借り入れをした日から10年であり、時効にかかって消滅します。
2020年4月1日に、消滅時効に関する民法が改正され2020年4月1日以降に生じた過払い金の場合、消滅時効は
① 最後に返済や借り入れをした日から10年
② 過払い金を請求できると知った日から5年
どちらか早い方で成立します。
自己判断はせず早めにご相談されることをおすすめいたします。
どんなお悩みでも山本・坪井綜合法律事務所はご相談を受けております。
お気軽にお問い合わせください。初回相談料でご相談をお受けします。
一人で悩まずに新たな第一歩をわたしたちと一緒に
山本・坪井綜合法律事務所があなたのお悩みに寄り添います。
弁護士法人 山本・坪井綜合法律事務所
法律相談コラム
2022/10/03
自己破産について
債務整理には、自己破産・任意整理・個人再生がありますが、今回は自己破産についてご説明します。
自己破産とは、借金を返せなくなったときに、一定の財産を債権者たちに平等に分配する一方で、「免責」を受けることで、借金を全額免除してもらう手続きのことをいいます。
自己破産にはメリットもあればデメリットもあります。
<メリット>
・多重債務問題が全面的に解決する。
・破産をしても、一定の財産は手元に残すことができる。現金では99万まで手元に残すことができ、日常生活に必要な財産等も残すことができる。
<デメリット>
・破産したら、ブラックリストにのり、借金やクレジットカードでのショッピングができなくなる。
・一度破産をすると、7年間は自己破産ができなくなる。
自己破産にはメリットやデメリットがありますので
多重債務でお悩みの方は、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士に相談をすることで、その方にあった債務整理の方法をご提案することができます。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所では、初回相談を無料で承っております。
事前御予約制となっておりますので、ご相談ご希望の場合は、まずはお気軽にお電話くださいませ。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィス
法律相談コラム
2022/04/11
刑事事件の身元引受人について
Q 会社の同僚が刑事事件を起こして、警察で取り調べを受けているようです。身元引受人になってもらいたいと連絡がありましたが、身元引受人とはどういったものですか?
A
1 刑事事件の身元引受人とは
刑事事件における身元引受人とは、「一度警察に捕まった被疑者が、間違った行動をとらないよう監督する人」のことを言います。
ここで言う「間違った行動」の例として挙げられるのが、逃亡や証拠隠滅、警察署への不出頭、さらなる犯罪行為、被害者へのお礼参り、自殺等があげられますが、被疑者や被告人がこのようなことをしないように監督する人が、身元引受人です。
2 刑事事件の身元引受人が必要となる場合
(1)取調べを受けたが逮捕されなかった場合
警察署で取調べを受けた後、警察が逮捕するまでの必要はないと判断した場合、身元引受人が必要となります。警察から身元引受人に連絡があり、警察署に本人を迎えに行くこととなります。
微罪処分や任意捜査(在宅捜査)の場合が該当します。
(2)逮捕された後、警察の判断で釈放される場合
警察に逮捕されたけど、検察に送致されず釈放される場合に、身元引受人に警察から連絡があり、警察署まで迎えに行きます。
痴漢や交通事故、交通違反で現行犯逮捕された場合が多いです。
(3)逮捕されたが、検察官が勾留請求しなかった場合
警察が逮捕し、すぐに釈放しない場合は、48時間以内に身柄を検察官に送致する手続きとなります。送致を受けた検察官は、逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断した場合は、さらなる身柄の拘束をする勾留の請求をしません。勾留の請求をしなかった場合は、逮捕された被疑者は釈放となりますので、検察官の判断で、身元引受人に連絡され、迎えに行くこととなる場合があります。
(4)裁判官が勾留請求を却下した場合
検察官の勾留請求に基づき、裁判官が勾留の必要性を判断し、必要ないと判断したならば、勾留却下となり、釈放となります。裁判官が勾留の必要性について判断するにあたって、身元引受人についても考慮されます。
(5)保釈請求をする場合
刑事事件で起訴されたならば、事案により保釈を請求することができます。保釈を請求するにあたり、身柄引受人を立てることで、保釈が認められる可能性が高くなります。
(6)執行猶予を求める場合
刑事事件で起訴され裁判になった場合、勾留中の被告人について執行猶予を求める際、身元引受人に情状証人として裁判所に出頭してもらい、今後の被告人を監護する意思があることや、その具体的な監護方法について話してもらい、執行猶予を求めていきます。
(7) 刑務所から仮釈放(仮出所)する場合
実刑の判決を受け、刑務所に服役した場合、刑期の終わりが近づくと、本人の反省や更生意欲の度合いにより、仮釈放が認められることがあります。仮釈放されるかの判断に、身元引受人がいるかどうかが重要な判断要素となります。
3 身元引受人になる条件
刑事事件の身元引受人になる条件については、法律で定められているわけではありませんが、誰でもよいわけではありません。実務上は、本人を監督するにふさわしい人が身元引受人になります。
身柄引受人として、ふさわしいと判断される可能性の高い順にお話していきます。
(1)同居の配偶者などの家族・親族
同居の家族・親族は、最もよくある身元保証人となります。配偶者がいれば配偶者、配偶者がいない場合は両親や兄弟、子どもなど同居の家族が最も理想的です。
同居していることで、日常的に本人とコミュニケーションをとる機会があり、本人を間近で監督することが可能であることから、本人の行動に目が行き届き、監督もしやすく、監督者としてふさわしいものと判断されます。
(2) 同居していない家族・親族
同居の家族がいない場合や刑事事件になっていることを同居の家族に知られたくない場合に、実家の両親や近くに住んでいる兄弟姉妹が身元引受人となる場合もあります。
同居していないことから、監督の実効性の点で劣るところがありますが、家族であることから問題ないものと思われます。
(3)職場の上司
一人暮らしや実家が遠方の場合、身寄りがない場合などの時は、職場の上司に身柄引受人になってもらう場合があります。
職場の上司は、日常的に本人とコミュニケーションをとっており、職場の上下関係からも生活指導を受けることができることから、身柄引受人として問題ないものと思われます。
しかし、職場の上司などに身元引受人を依頼すると、職場に刑事事件を犯したことが知れてしまい、職場で何らかのペナルティを受ける可能性がありますので、注意が必要です。
(4) 彼女
家族や職場の上司にも、刑事事件となっていることを知られたくない場合は、彼女に身柄引受人をお願いすることがあります。
彼女と言っても、様々な関係があり、婚約している彼女や同棲している彼女であれば問題ないものと思われます。
(5)友人、知人
他に適切な身元引受人がいない場合は、友人や知人に身元引受人になってもらうことがあります。しかし、友人、知人と言っても、日ごろから本人と連絡を取り合っていることが前提となり、単なる知り合いや何年も連絡を取っていない友人、知人は身柄引受人として認められるのは難しいものと思われます。
4 身元引受人の役割
刑事事件における身元引受人の役割は、前にも述べた通り、間違った行動をしないように監督することです。
(1)逃走や証拠隠滅をさせない
身元引受人の主な役割として、被疑者本人に逃走や証拠隠滅をさせないことです。
被疑者を一人で帰宅させると、どこか遠くへ逃走したり、事件に関する証拠物を処分したり、隠ぺいしたりする可能性があります。
そのため、捜査機関は、被疑者の家族やよく知る人物などに身元引受人となってもらい、逃走や証拠隠滅しないように監視してもらいます。
(2)取調べや裁判に出頭・出廷するように促す
警察や検察から取調べなどの呼び出しがあった場合は、応じるように促すのが、身元引受人の役割の一つです。
また、起訴された場合は、公判となり、被告人本人が裁判所に出廷しなくてはなりませんので、身元引受人は、裁判所への出廷を促さなくてはなりません。
(3)社会への更生をさせる
身元引受人は、犯罪を犯した被疑者を更生させる役割も担っています。
特に、窃盗事件や薬物事件などは、再犯性が高いので、病院や更生施設等に付き添うなど、再犯しないように注意するとともに社会への更生の役割も求められます。
5 身元引受人のデメリット
刑事事件の身柄引受人になった場合、法的にデメリットはありません。たとえ、本人が逃走したり、証拠をいん滅したとしても、身元引受人がそれに積極的に協力していない限り、法的に処罰されることはありません。
しかし、保釈中、被告人の保釈金を身元引受人が立て替えていた場合に、もし本人が逃走や証拠隠滅をすると、保釈が取り消され、立て替えていた保釈金は没収されます。
6 身柄引受人を降りることの可能性
身柄引受人自体は、法的な制度ではないので、いつでも辞めることができます。
ただし、一度その人の身元引受人を辞めた場合、次にその人の身元引受人になろうとしても認められない可能性があります。
その人が別の身元引受人を立てることが出来なければ、身柄を長く拘束されたり、保釈されなかったりして、不利益な結果となる可能性があります。
7 弁護士の身柄引受人
弁護士であっても、身柄引受人になることは可能です。
弁護士が本人の自首に同行して警察署に行った時、身柄引受人になる場合や、警察からの任意出頭の要請があった時、その前日までに弁護士が警察の担当者に対し、弁護士の身柄請書を送っておく場合等です。
なお、本人が逮捕された時は、弁護士は身元引受人にはなれません。
以上のとおり、身元引受人になることに対して、それほど心配する必要はありません。
いつ自分が犯罪者扱いをされたり、犯罪に巻き込まれるか分かりません。
そんな時、頼りになるのが、弁護士です。
当弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスには、刑事事件に強い、経験豊富な弁護士が在籍しております。
また当事務所は、刑事事件の専門的な事務所であり、素早い立ち上がりで対応してまいります。
刑事事件を起こしたり、巻き込まれた方は、まず当事務所にご連絡ください。
法律相談コラム
2022/04/03
成年年齢の引下げ
2022年4月1日から、民法で定める成年年齢が現行の20歳から18歳に引き下けられました。
1876年(明治9年)の「太政官布告」以来、実に140年ぶりに、成年の定義が見直されることで、若者たちの生活にどのような影響があるのでしようか、また何が変わるのでしようか。
1 「成年年齢」はいつから変わる
我が国では、成年年齢は20歳と民法で定められていました。この民法が改正され、2022年(令和4年)4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に変わりました。
これによって、2022年4月1日に、18歳、19歳の方は新成人となります。
現在、未成年の方は、生年月日によって新成人となる日が異なります。
2 成年(18歳)になったらできること
⑴ 親の同意がなくても契約できる。
民法が定める成年年齢には、「一人で有効な契約をすることができる年齢」という意味と、「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味があります。
成年に達すると親の同意を得なくても、自分の意志で様々な契約ができるようになるということです。
例えば、
・携帯電話の契約
・クレジットカードを作る
(審査結果、クレジットカードの契約ができないことがある)
・一人暮らしのためアパートを借りる
・ローンを組んで自動車や高級品を購入する
(返済能力を超えるローンの契約はできないことがある)
などの契約ができるようになりました。
⑵ 進学や就職などの進路決定を自分で決められる。
もっとも、進路決定には、親や学校の理解を得ることが大切です。
⑶ 10年有効のパスポートを取得する。
⑷ 公認会計士や司法書士、医師免許、歯科医師免許、薬剤師免許、獣医師免許、土地家屋調査士、行政書士、社会保険労務士などの国家資格を取る。
⑸ 結婚
女性の結婚可能年齢が、16歳から18歳に引き上げられ、男女ともに18歳になります。
なお、2022年4月1日の時点で、既に16歳以上の女性は、引き続き、18歳未満でも結婚することができます。
⑹ 性同一性障害の人が性別の取扱いの変更審判を受けられる。
⑺ 人権擁護委員・民生委員になる資格が得られる。 など
3 20歳にならないとできないこと
⑴ 飲酒すること。
⑵ 喫煙すること。
⑶ 競輪、競馬、オートレース、競艇などの公営競技の投票券(馬券など)を買うこと。
→飲酒や喫煙、ギャンブルは健康面への影響や非行防止、青少年保護などの観点から、従来の年齢要件が維持されました。
⑷ 養子を迎えること。
⑸ 大型・中型自動車運転免許を取得すること。
⑹ 国民年金の加入義務、国民年金保険料納付義務
⑺ 猟銃の所持の許可
⑻ 指定暴力団等への加入強要が禁止される者の年齢 など
4 養育費に関して
子ども養育費については、「子が成年に達するまでの養育費を支払う」との取り決めがなされた時点において、成年年齢が20歳であれば、当初の約束どおり、子どもが20歳になるまで支払い義務があると考えられます。
また、養育費は、子どもが未成熟であって経済的に自立することをきたいすることができない場合に支払われるものなので、子どもが成年に達したとしても、大学進学などで経済的・社会的に自立しているとはいえない状態であれば、引き継き、養育費を支払う義務を負うことになります。そのため、成年年齢が引き下げられたからといって、養育費の支払い期間が、当然「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。
今後、新たに養育費の取り決めをする場合には、「○○が大学を卒業する年(22歳)の3月末まで」のように、明確に支払い期間の終期を定めることが望ましいと考えられます。
5 消費者トラブルに遭わないために
未成年者の場合では、契約には親の同意が必要です。
もし、未成年者が親の同意を得ずに契約した場合には、民法で「未成年者が親の同意を得ずに契約した場合は、原則として、契約を取り消すことができる」(未成年者取消権)と定められており、その契約は取り消すことができます。この未成年者取消権は、未成年者を保護するためのものであり、未成年の消費者被害を抑止する役割を果たしています。
成年年齢を18歳に引き下げた場合は、18歳、19歳の方は、未成年取消権を行使することができなくなりした。つまり、契約を結ぶかどうかを決めるのも自分なら、その契約に対して責任を負うのも自分自身になります。
一旦締結した契約は、原則として守らなければなりません。
そのため、契約上の義務などを怠るとトラブルに巻き込まれたり、消費者被害に遭う可能性もあります。
契約書にサインする前に、自分にとって本当に必要な契約かをよく考え、リスクやトラブルになり得る点がないかどうかよく確認しましょう。
契約をするように強く迫ってきたり、支払いを急がされたりする場合は、注意が必要で、一旦書類を持ち帰るなどして、しっかり検討することが大切です。
契約をしてしまった場後でも、相手に騙されたり、脅迫されたりして結んだ契約は、取り消しが可能です。
また、美容医療関係や英会話教室等の契約では、クーリングオフという制度を使って取り消すことができます。
そうした消費者トラブルに遭わないためには、未成年のうちから、契約に関する知識を学び、様々なルールを知った上でもその契約が必要かよく検討する力を身につけておくことが重要です。
もしトラブルに遭ってしまった場合は、一人で抱え込まず、家族や信頼できる友人や弁護士、消費生活センター等の相談窓口などに相談することが大切です。
刑事事件
2022/04/03
改正少年法
事件を起こした18歳、19歳について、一定の厳罰化を図る少年法等の一部を改正する法律(改正少年法)が、2022年(令和4年)4月1日に施行されました。
選挙権年齢や民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことにより、整合性を図る目的で行われました。
改正少年法は、18歳・19歳の者が、犯罪を犯した場合には、その立場に応じた取扱いとするため、「特定少年」として、17歳以下の少年とは異なる特例を定めています。
それでは改正少年法の内容について、説明します。
1 少年法の目的
少年法とは、少年の健全な育成を図るため、非行少年に対する処分やその手続きなどについて定める法律です。
少年法第1条で、少年法の目的を「非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の処置を講ずること」と定めています。
2 少年法における手続き・処分
少年事件については、検察官が処分を決めるのではなく、全ての事件が家庭裁判所に送られ、家庭裁判所が処分を決定します。家庭裁判所は、少年に対し、犯罪の事実や少年の生い立ち・性格・家庭環境などを調査します。その後、家庭裁判所が少年に対する処分を決定します。
家庭裁判所が少年に対して行う処分には、主に「検察官送致(逆送)」、「少年院送致」、「保護観察」などがあります。
検察官送致(逆送)は、家庭裁判所が、保護処分ではなく、懲役、罰金などの刑罰を科すべきと判断した場合、事件を検察官に送る手続きです。逆送された事件は、検察官によって刑事裁判所に起訴され、刑事裁判で有罪となれば、刑罰が科せられます。
これに対して、少年院送致と保護観察はいずれも保護処分であり、少年院送致は、少年を少年院に収容して処遇を行う処分、保護観察は、少年に対して社会内で処遇を行う処分です。
3 保護処分と刑罰の違い
少年法の対象となる少年には、原則、「刑罰」ではなく、「保護処分」が下されます。
保護処分である少年院送致や保護観察は、少年の更生を目的として家庭裁判所が科す特別な処分であり、刑事裁判所が課す懲役、罰金などの刑罰とは異なるものです。
なお、少年院送致は対象を少年院に収容し、その特性に応じた矯正教育などを行うものです。
保護観察とは、対象者を施設に収容せずに、保護観察所が指導監督や補導援護を行うものです。
4 逆送と原則逆送対象事件
「逆送」とは、家庭裁判所が少年に対して、保護処分ではなく、懲役や罰金などの刑罰を科すべきであると考えた場合に、事件を検察官に送ることをいいます。事件が逆送された場合、検察官によって刑事裁判所に起訴され、刑事裁判で有罪となれば、刑罰が科せられことになります。
原則逆送対象事件とは、家庭裁判所が原則として逆送しなければならないとされている事件で、現行法では、「16歳以上の少年が、故意で犯罪行為により被害者を死亡させた罪(殺人罪、傷害致死罪など)の事件」が当てはまります。
5 改正少年法のポイント
⑴ 特定少年の厳罰化
改正少年法では、「20歳に満たない者」が「少年」として一律に保護対象とされることは維持された上、新たに18歳、19歳の少年を「特定少年」と定義し、17歳以下の少年とは異なる取扱いを受けるとともに、より厳しく罰する方針に変更されました。
⑵ 原則逆送対象事件の拡大
これまで、原則逆送対象事件は、「16歳以上の少年が故意で被害者を死亡させた罪の事件」のみを適用されました。
しかし、改正少年法では、「16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件」に加えて、「特定少年が犯した死刑、無期又は1年以上の懲役・禁固にあたる罪の事件」も追加され、原則逆送対象事件が拡大されました。
これにより、特定少年については、例えば、現住建造物等放火罪、強制性交等罪、強盗罪、組織的詐欺罪などが、新たに原則逆送対象事件となりました。
⑶ 実名報道の解禁
少年事件については、これまで犯人の実名・写真等の報道が禁止されていましたが、改正少年法では、特定少年の時に犯した事件について起訴された場合、実名や写真等の報道が許されるようになりました。
ただし、略式手続き(非公開の書面審理によって、一定額以下の罰金や科料を科す手続き)である場合は、解禁の対象外となります。
⑷ 保護処分に関する特例
改正少年法により、特定少年(18歳以上の少年)に対する保護処分の内容やその期間は、「犯情の軽重を考慮」して決定されることが明文化されました。
また、審判時に、保護観察は、6ヶ月か、2年のいずれか、少年院送致は3年の範囲で、保護処分の期間が明示されることとなりました。
⑸ 不定期刑の適用除外
特定少年(18歳以上の少年)は、逆送されて起訴された場合の刑事裁判では、原則として、20歳以上と同様に取り扱われ、不定期刑ではなく、明確な期間を言い渡すこととなりました。
例えば、判決で有期の懲役が科される場合は、17歳以下の少年には、最長15年以下の範囲で、刑の長期と短期を定める不定期刑(例として、懲役5年以上10年以下)が言い渡されるのに対し、特定少年には、20歳以上と同様に扱われることから、最長30年以下の範囲で定期刑(例として、懲役10年)が言い渡されることとなります。
⑹ 虞犯(ぐ犯)少年の適用外
特定少年については、民法上の成年となることなどを考慮し、将来、罪を犯したり、刑罰法令に触れる行為をするおそれがあること(ぐ犯)を理由とする保護処分は行われないこととなりました。