刑事事件
2022/01/03
逮捕の種類について
よくテレビドラマ等を見ていると、刑事が犯人に対して、「お前を逮捕する」と言って手錠をかけているシーンをありますが、犯人を逮捕するためには、刑事訴訟法等で逮捕の要件等が定められています。
1 逮捕とは
逮捕とは、捜査機関又は私人が被疑者の逃亡及び罪証隠滅を防止するために強制的に身柄を拘束する行為です。
逮捕には、刑事訴訟法上、「通常逮捕」、「緊急逮捕」、「現行犯逮捕」の3つの種類があります。
2 逮捕の種類
①通常逮捕
通常逮捕については、刑事訴訟法第199条1項に、「検察官、検察事
務官及び司法警察員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理
由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕す
ることができる」と定められております。
また、憲法第33条に、「何人も現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない」と定められていることから、裁判官の予め発する逮捕状を呈示したたうえで、被疑者を逮捕することをいい、これが原則的な逮捕手続きです。
さらに、刑事訴訟法第199条2項に、裁判官は、被疑者が罪を犯した
ことを疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官又は司法警察員の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。」と定められています。
通常逮捕を適法に行うためには、検察官又は司法警察員は、事前に逮捕状の請求を裁判官に行い、裁判官が、「逮捕の理由(被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由)」と「逮捕の必要性」を審査し、逮捕状を発布します。
逮捕の理由の「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(嫌疑の相当性)は、充分な理由より緩やかですが、捜査機関の主観的嫌疑では不十分であり、客観的合理的な嫌疑が必要であり、つまり特定の犯罪が存在し、被逮捕者がその犯罪を犯した可能性が高いことが必要となります。
また、逮捕の必要性については、被疑者が逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがあれば、逮捕の必要性が認められます。
さらに、刑事訴訟法第201条1項に、「逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。」と逮捕状による逮捕の手続きが定められています。
逮捕状を所持していないためこれを示すことができない場合において、急速を要する時は、被疑者に対し、被疑事実の要旨及び令状が発せられている旨を告げて、その執行をすることができます。ただし、令状はできる限り速やかにこれを示さなければなりません。(緊急執行)
②緊急逮捕
緊急逮捕については、刑事訴訟法第210条1項に、「検察官、検察事務官又は司法警察員は、死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁固にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる」と定められています。
また、「この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続きをしなければならず、逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない」となっています。
このことから、緊急逮捕の実質的要件としては、「死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁固にあたる罪」、「罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合」、「急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとき」となります。
「死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁固にあたる罪」のみ適用されます。
また、「罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合」とは、通常逮捕の要件よりもその犯人である疑いが強いことが要求されます。(嫌疑の充分性)
さらに、「急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとき」とは、直ちに逮捕しなければ被疑者が逃亡又は罪証隠滅をするおそれがあるため、裁判官から逮捕状を発布してもらう時間がないことです。(逮捕の緊急性)
被疑者の年齢、境遇、犯罪の軽重、態様等も逮捕の判断基準となります。(逮捕の必要性)
緊急逮捕の形式的要件として、緊急逮捕を行うに当たっては、被疑者に対し疑われている犯罪の要旨と急を要し逮捕状を得ることができなかった旨を告げなければなりません。
また、逮捕後直ちに逮捕状の請求をしなければなりません。事案の概要
により時間の長短は一概に言えませんが、おおむね3時間以内とされてい
ます。
逮捕後釈放した場合も、逮捕状の請求が必要となります。
法律的要件ではありませんが、逮捕状が発布されたならば、被疑者に対し、逮捕状を呈示することが妥当とされています。
③現行犯逮捕
現行犯逮捕については、刑事訴訟法第213条に、「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と定められていますので、私人であっても被疑者を逮捕することができます。
その理由は、通常逮捕や緊急逮捕と異なり、犯罪と犯人の明白性から誤逮捕のおそれがひくいこと及び逮捕の必要性・緊急性の犯人を確保し犯罪を制圧する等逮捕の必要性が高いことから、令状がなくして逮捕することができるのです。
現行犯人とは、刑事訴訟法第212条1項に、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯人とする」と定められています。
また、準現行犯人については、刑事訴訟法第212条2項に、「各号の一にあたるものが、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。」と定められており、
・犯人として追呼されているとき。
・贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる凶器その他の物を所持しているとき。
・身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
・誰何され逃走しようとするとき。
が、準現行犯人の要件となっています。