法律相談コラム
2022/02/28
相続問題に関するQ&A 6
Q 父が亡くなり、遺品の整理をしていたら、遺言書が出てきました。どうしたらよいのでしょうか?
A 遺言書は、亡くなられた方が遺される方に対する想いを書いた書面であることから、その想いを尊重し、その想いに沿った遺言書の内容を実現しなければなりません。そのためにも、法律に沿った手続きをする必要があります。
遺言書を発見した場合の取り扱いについて、お話しします。
1 遺言書を見つけた時は、絶対に開けないで、家庭裁判所に持っていく。
もし、遺言書を見つけた時、「どんなことが書かれているのか」との思いから、慌てて開封してしまうかもしれません。
遺言書は、「家庭裁判所において、相続人の立会いの下、開封しなければならない」と法律で定められています。もし、これに違反し開封した場合には、5万円以下の過料(罰金)に科せられることが、稀にあります。
遺言書は、すぐに家庭裁判所に持っていき、開封してもらいましょう。
このことを「検認」と言います。
検認が必要とされる理由は、亡くなられた方の意思の実現のために、
・遺言書自体が本物かどうか
・誰かの都合のいいように、勝手に書き換えられていないか
などを確かめるためです。
2 遺言書を見つけたら、遺言書の種類を確認する。
遺言書には、「自筆証書遺言」、「秘密証書遺言」、「公正証書遺言」の3種類があります。
◇「自筆証書遺言」・・・亡くなられた方ご自身で全文を書いた遺言書で、ご本人が保管されている場合がほとんどです。
自筆証書遺言には、基本的なルールがあり、なかなかルールどおり作成されていない場合が多く、有効性を含めて、家庭裁判所の検認が必要です。また、検認後、遺言書に書かれた文面が正しい形式で書かれているかの、確認も必要となります。
◇「秘密証書遺言」・・・亡くなられた方ご自身が作成され遺言書を公証人が存在のみを証明し、原本を本人が保管する遺言書で、封筒の裏面に公証人の名前と捺印があれば、秘密証書遺言となります。秘密証書遺言書も、家庭裁判所の検認が必要となります。
◇「公正証書遺言」・・・亡くなられた方が公証人に依頼し、立会いの下で作成され、原本を公証人が保管し、正本を亡くなられた本人が保管する遺言書です。公正証書遺言は、公正人の指導の下作成されていることから、間違いもなく、そのまま執行できますので、家庭裁判所の検認は必要ありません。
このように、遺言書を発見したならば、その種類により、家庭裁判所に検認の申立てを行いましょう。
3 相続人に対して、遺言書の存在を開示する。
相続人に対して、遺言書が存在することを開示し、その内容を確認する手続きを行わなくてはなりません。
4 家庭裁判所に検認の申立をする。
自署証書遺言のような検認の必要な遺言書であれば、家庭裁判所に対して、検認の申立てを行う必要があります。
また、複数の遺言書が見つかる場合がありますが、財産に関する内容で、重複している内容については日付の最も新しいのものが適用され、重複していない内容では日付の古いものも有効となります。検認には、全ての遺言書を提出しましょう。
5 遺言書の内容の確認をする。
家庭裁判所の遺言書の検認は、相続人に対して遺言書の存在や内容を知らせるとともに、遺言書の形状や日付、署名などの内容を明確にして、遺言書が偽造されたものや変造されたものでないことを確認する手続であり、その遺言書が有効か無効かの判断はされていません。
その遺言書の内容が実際に効力を持つものであるのか、不審な点があるのならば、専門家の弁護士へご相談し、別途遺言書に関する調停や裁判を行う必要があります。
6 相続の財産のすべてを把握する。
亡くなられた方の相続財産のすべてを把握します。
遺言書に書かれていない財産も存在する可能性がありますので、相続財産のすべてを把握することが重要です。
7 遺言書を執行する。
遺言書の確認が終われば、亡くなられた方の意思を尊重し手続きを行い、遺言に書かれた内容を実現させることが大切で、その行為を、遺言の執行と言います。
8 遺言の執行者を選任する。
遺言を執行するには、相続する財産の保管や引渡し、登記など様々な手続きが発生し、相続者が分担して行っても、その手続きは煩雑です。
そこで、「遺言の執行者」を選任することで、速やかに遺言の実現をすることができます。
遺言の執行者は、未成年者、成年後見人がついている方、破産した方を除いて、誰でもなることができます。特に、公正証書遺言の場合は、記載の中に遺言執行者が指定されていることが多くあります。
遺言の執行者が指定されていなかったり、指定があっても既にその方がなくなっている場合は、家庭裁判所に申立て、選任してもらいます。
9 戸籍から正確な相続人を特定する。
亡くなられた方の戸籍謄本を取得し、遺言に書かれている方以外にも相続の対象となる方がいないか確認し、正確に相続人を特定します。
10 他の相続人の遺留分を侵害していないか、確認する。
相続する財産の内容に大きく差があったり、相続する権利のある人の名前が記載されていないなど、遺言の内容が偏っている場合がありますが、そういった方のために、遺留分(最低限相続分)があります。
この割合を下回った遺言が作成されている場合は、一部の相続人を指名して、「遺留分滅殺請求」をすることで、その割合は保証されます。ただし、亡くなられた方の兄弟など第三順位に当たる方には、遺留分がありませんので注意が必要です。
11 相続財産を再度確認する。
相続財産について、再度確認します。
特に、自筆証書遺言の場合は、亡くなられた方の意思だけが記載されており、財産がすべて記載されていない場合がありますので、注意しましょう。
もし、遺言の内容で記載のない財産がある場合は、遺産分割協議で遺産の分割を決めていきます。
12 相続の手続き
相続財産をすべて把握したのち、遺言の内容を執行します。
13 すべての相続人へ報告する。
遺産の相続の手続きがすべて完了したら、すべての相続の対象者に報告します。
上記は、あくまでもよくある遺言発見時の手続きの一例をご紹介しました。
実際にはその都度手続きも異なるため、まずは弁護士へご相談しましょう。
亡くなられた方の遺言書が見つかった場合は、亡くなられた方の意思を尊重するためにも、遺言の内容に沿った相続を執行することが重要と思われます。
相続に関する手続きは、財産ごとに書類を集めたり、所定の手続きを行ったりと手続きが煩雑なことから、専門の弁護士にご依頼することをお勧めします。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスは、相続に関する様々な相談実績多数です。