法律相談コラム
2022/04/03
成年年齢の引下げ
2022年4月1日から、民法で定める成年年齢が現行の20歳から18歳に引き下けられました。
1876年(明治9年)の「太政官布告」以来、実に140年ぶりに、成年の定義が見直されることで、若者たちの生活にどのような影響があるのでしようか、また何が変わるのでしようか。
1 「成年年齢」はいつから変わる
我が国では、成年年齢は20歳と民法で定められていました。この民法が改正され、2022年(令和4年)4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に変わりました。
これによって、2022年4月1日に、18歳、19歳の方は新成人となります。
現在、未成年の方は、生年月日によって新成人となる日が異なります。
2 成年(18歳)になったらできること
⑴ 親の同意がなくても契約できる。
民法が定める成年年齢には、「一人で有効な契約をすることができる年齢」という意味と、「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味があります。
成年に達すると親の同意を得なくても、自分の意志で様々な契約ができるようになるということです。
例えば、
・携帯電話の契約
・クレジットカードを作る
(審査結果、クレジットカードの契約ができないことがある)
・一人暮らしのためアパートを借りる
・ローンを組んで自動車や高級品を購入する
(返済能力を超えるローンの契約はできないことがある)
などの契約ができるようになりました。
⑵ 進学や就職などの進路決定を自分で決められる。
もっとも、進路決定には、親や学校の理解を得ることが大切です。
⑶ 10年有効のパスポートを取得する。
⑷ 公認会計士や司法書士、医師免許、歯科医師免許、薬剤師免許、獣医師免許、土地家屋調査士、行政書士、社会保険労務士などの国家資格を取る。
⑸ 結婚
女性の結婚可能年齢が、16歳から18歳に引き上げられ、男女ともに18歳になります。
なお、2022年4月1日の時点で、既に16歳以上の女性は、引き続き、18歳未満でも結婚することができます。
⑹ 性同一性障害の人が性別の取扱いの変更審判を受けられる。
⑺ 人権擁護委員・民生委員になる資格が得られる。 など
3 20歳にならないとできないこと
⑴ 飲酒すること。
⑵ 喫煙すること。
⑶ 競輪、競馬、オートレース、競艇などの公営競技の投票券(馬券など)を買うこと。
→飲酒や喫煙、ギャンブルは健康面への影響や非行防止、青少年保護などの観点から、従来の年齢要件が維持されました。
⑷ 養子を迎えること。
⑸ 大型・中型自動車運転免許を取得すること。
⑹ 国民年金の加入義務、国民年金保険料納付義務
⑺ 猟銃の所持の許可
⑻ 指定暴力団等への加入強要が禁止される者の年齢 など
4 養育費に関して
子ども養育費については、「子が成年に達するまでの養育費を支払う」との取り決めがなされた時点において、成年年齢が20歳であれば、当初の約束どおり、子どもが20歳になるまで支払い義務があると考えられます。
また、養育費は、子どもが未成熟であって経済的に自立することをきたいすることができない場合に支払われるものなので、子どもが成年に達したとしても、大学進学などで経済的・社会的に自立しているとはいえない状態であれば、引き継き、養育費を支払う義務を負うことになります。そのため、成年年齢が引き下げられたからといって、養育費の支払い期間が、当然「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。
今後、新たに養育費の取り決めをする場合には、「○○が大学を卒業する年(22歳)の3月末まで」のように、明確に支払い期間の終期を定めることが望ましいと考えられます。
5 消費者トラブルに遭わないために
未成年者の場合では、契約には親の同意が必要です。
もし、未成年者が親の同意を得ずに契約した場合には、民法で「未成年者が親の同意を得ずに契約した場合は、原則として、契約を取り消すことができる」(未成年者取消権)と定められており、その契約は取り消すことができます。この未成年者取消権は、未成年者を保護するためのものであり、未成年の消費者被害を抑止する役割を果たしています。
成年年齢を18歳に引き下げた場合は、18歳、19歳の方は、未成年取消権を行使することができなくなりした。つまり、契約を結ぶかどうかを決めるのも自分なら、その契約に対して責任を負うのも自分自身になります。
一旦締結した契約は、原則として守らなければなりません。
そのため、契約上の義務などを怠るとトラブルに巻き込まれたり、消費者被害に遭う可能性もあります。
契約書にサインする前に、自分にとって本当に必要な契約かをよく考え、リスクやトラブルになり得る点がないかどうかよく確認しましょう。
契約をするように強く迫ってきたり、支払いを急がされたりする場合は、注意が必要で、一旦書類を持ち帰るなどして、しっかり検討することが大切です。
契約をしてしまった場後でも、相手に騙されたり、脅迫されたりして結んだ契約は、取り消しが可能です。
また、美容医療関係や英会話教室等の契約では、クーリングオフという制度を使って取り消すことができます。
そうした消費者トラブルに遭わないためには、未成年のうちから、契約に関する知識を学び、様々なルールを知った上でもその契約が必要かよく検討する力を身につけておくことが重要です。
もしトラブルに遭ってしまった場合は、一人で抱え込まず、家族や信頼できる友人や弁護士、消費生活センター等の相談窓口などに相談することが大切です。