法律相談コラム
2022/03/07
刑法に関するQ&A 1
【刑罰の種類】
Q 刑罰の種類について教えてください。
A 犯罪を犯した場合に科せられる刑罰の種類については、刑法第9条に、「死刑、懲役、禁固、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。」と定められています。
刑罰の種類の「死刑」、「懲役」、「禁固」、「罰金」、「拘留」、「科料」及び「没収」について、説明します。
1 死刑とは
「死刑」とは、受刑者の生命を奪う刑で、死刑の言い渡しを受けた場合、死刑執行まで、刑事施設に収容され、絞首によって死刑執行されます。(刑法第11条)
人の生命を奪う刑罰であるため、一定の重大な犯罪に対する刑罰として法定されており、刑法犯では、
・内乱罪(刑法第77条1項)
・外患誘致罪(刑法第81条)
・外患援助罪(刑法第82条)
・現住建造物等放火罪(刑法第108条)
・激発物破裂罪(刑法第117条)
・現住建造物等浸害罪(刑法第119条)
・列車転覆致死罪(刑法第126条)
・往来危険による汽車転覆等罪(刑法第127条)
・水道毒物混入致死罪(刑法第146条後段)
・殺人罪(刑法第199条)
・強盗致死罪(刑法第240条後段)
・強盗強制性交等致死罪(刑法第241条後段)
の12種類があります。また、特別刑法犯として、
・爆発物使用罪(爆発物取締罰則第1条)
・航空機強取等致死罪(航空機の強取等の処罰に関する法律第2条)
などが規定されています。
尚、犯罪を犯したとき、18歳未満であった者に対しては、死刑を科すことはできません。(少年法第51条)
2 懲役とは
「懲役」とは、受刑者の身体を拘束して自由を奪う自由刑の一つで、刑事施設に拘置して、刑務作業に服させる刑罰です。(刑法第12条)
懲役には、有期懲役と無期懲役があり、有期懲役は、1か月以上20年以下とされていますが、併合罪などで刑を加重する場合や、死刑や無期懲役を軽減する場合には、30年まで引き上げることができます。(刑法第14条)
3 禁固とは
「禁固」とは、懲役と同様、受刑者の身体を拘束して自由を奪う自由刑の一つで、刑事施設に拘置する刑罰ですが、刑務作業は課されません。(刑法第13条)
禁固にも、懲役と同様に、無期と有期の場合があり、有期禁固は、1か月以上20年以下とされています。また、懲役と同様に、刑を加重する場合は、30年まで引き上げることができ、軽減する場合には1か月未満に引き下げることができます。
なお、禁固刑の受刑者も希望すれば、作業につくことができます。
実務上は、自動車運転過失致死傷罪など、過失犯に言い渡される場合が多いです。
4 罰金とは
「罰金」とは、受刑者の一定の財産を奪う財産刑の一つで、1万円以上の金銭を国に納付させる刑罰です。(刑法第15条)
罰金の上限額は、各犯罪の法律で定められており、例えば、窃盗罪では「50万円以下の罰金」となっています。罰金が支払えない場合は、1日以上2年以下の期間で、労役場に留置され、日当換算して、罰金相当を支払い終わるまで、労務につきます。
裁判の確定から30日以内に罰金を納めない場合は、労役場に留置されることとなります。
5 拘留について
「拘留」とは、懲役、禁固と同様、受刑者の身体を拘束して自由を奪う自由刑の一つで、1日以上30日未満、刑事施設に拘置する刑罰です。(刑法第16条)
懲役刑と異なり、労務作業につくことはありません。侮辱罪などの法定刑に規定されています。
6 科料とは
「科料」とは、罰金と同様、受刑者の一定の財産を奪う財産刑の一つで、千円以上1万円未満の金銭を国に納付させる刑罰です。(刑法第17条)
科料が支払えない場合は、1日以上30日以下の期間で、労役場に留置され、日当換算して、科料相当を支払い終わるまで、労務につきます。
裁判の確定から10日以内に科料を納めない場合は、労役場に留置されることとなります。
7 没収とは
「没収」とは、死刑、懲役、罰金、拘留、科料の主刑に付け加えて言い渡される刑罰で、犯罪行為に不可欠の物、犯罪に使われた物、犯罪行為によって作られた物、犯罪行為によって得た物、犯罪行為によって作られた物の対価として得た物などの所有権をはく奪し、国庫に帰属させる刑です。(刑法第19条)
犯人以外の物であっても、その人が犯罪の後に、その犯罪の事情を知って得た物であれば、その物も没収の対象となります。
没収を言い渡されたのに、対象物の全部又は一部を納められないときは、その価格を追徴されることとなります。
例えば、覚せい剤や大麻などの薬物事犯における違法薬物、偽造文書や通貨偽造事犯における偽造された文書や偽造通貨などが、没収の対象となります。
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