法律相談コラム
2022/02/18
相続問題のQ&A 4
Q 兄は、父が亡くなる前、家の購入資金として、1,000万円を貰っていました。このお金も、相続の対象になりませんか?
A 相続人が亡くなられた方(被相続人)から生前、特別に財産をもらうことを「特別受益」と言います。
特別受益は、特別に財産をもらった相続人と他の相続人との間に不公平が生じるため、この不公平を是正するための制度です。
特別受益の対象として、➀遺贈、➁生計の資本➄としての贈与、➂婚姻のため➃の贈与、➃養子縁組ための贈与、➄不公平な生命保険などが該当します。
➀ 遺贈
遺言書により、受け取った財産は、全て特別受益の対象となります。
➁ 生計の資本としての贈与
事業を始めるための開業資金、住宅の購入資金、居住用の不動産、私立の大学の学費、扶養の範囲を超える金銭援助などの贈与のことです。小遣いなどの親族間の扶養的金銭援助を超えないものは、含まれません。
➂ 婚姻のための贈与
結婚の際の持参金や嫁入り道具など、婚姻のための贈与は、特別受益となります。
➃ 養子縁組ための贈与
養子縁組をして子どもを迎える際、養親が居住用の不動産を用意する場合があります。そのような不動産の贈与が特別受益となります。
➄ 不公平な生命保険
生命保険は、基本的に特別受益に含まれませんが、相続人の内一人だけが高額な生命保険を受け取るなど、相続人間で不公平が著しい場合は、特別受益の対象となる場合があります。
被相続人から特別受益にあたる財産を譲り受けた相続人(特別受益者)は、その額を相続開始時の相続財産全体の評価額に加算(みなし相続財産)して、法定相続分を計算し、その法定相続分から特別受益分が差し引かれます。
このように特別受益の金額を相続財産に加算することを「特別受益の持戻し」と言います。
特別受益の額がこうして計算された法定相続分を超えない場合には、特別受益者は相続による新たな分配を求めることはできません。
特別受益には、時効はありませんので、何年前の贈与であっても特別受益に該当する場合があります。
また、相続人が特別受益を受けていた場合であっても、特別受益を考慮し相続分を計算しない場合があります。
➀ 相続人が一人しかいない場合
相続人が一人しかいない場合は、特別受益を考慮し相続分を計算する必要はありません。
➁ 相続財産がマイナスの場合
被相続人が多額の借金を抱えており、相続財産がマイナスとなる場合は、相続人は被相続人に代わって借金を弁済する必要があります。
相続人の中に、特別受益を受けた人がいたとしても、相続財産がマイナスの場合は、特別受益を考慮し相続分を計算する必要はありません。
➂ 受益者が相続放棄した場合
特別受益を受けた人が相続放棄をした場合は、最初から相続人ではないとみなされるので、特別受益を考慮し相続分を計算する必要はありません。
➃ 遺言書に考慮しないとある場合
被相続人が、遺言書で特別受益を考慮しないという意思表示をしている場合は、特別受益を考慮し相続分を計算する必要はありません。
➄ 他の相続人が請求しない場合
特別受益にあたる遺贈や贈与があったとしても、他の相続人が主張しなければ特別受益を考慮して相続分を計算する必要はありません。
このような、相続人間で特別受益が問題となり、遺産分割協議がスムーズに進まないとお困りの場合は、相続に強い専門の弁護士に相談されることをお勧め致します。
当弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスでは、相続に関するさまざまにご相談をお受けしており、ご相談者様にとって、最善の方法をご提案いたします。
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